妊活応援ブログ

池田麻里奈

第10回

夫への長い手紙

里子を10人以上育て上げているベテラン里親さんに「養子縁組を考えているけれど、子育て経験なく不安ばかり募る」と話をすると、「始めてしまえばいいのよ!」と背中をバシッと思いっ切り叩かれました。

あの時から7年・・・

私にその勇気がなくウジウジと考えているうちに、あっという間に年月が経過。あの時、もしも赤ちゃんを迎えていれば、小学生です。もちろん友人の子供たちも同様に育っていて、小学生、中学生と進み、孫が生まれるという人もいます!

もしも、もしも・・・と過去のことを考えるのは良くない。不妊治療だって、もしもあの時という後悔はたくさん残してきました。
もう後悔はしたくない、ここは踏ん張って時間を割いて夫婦で話し合わないといけない時だと思いました。

養子縁組の条件として子供との年齢差を40歳にしている民間団体もあり、不妊治療と同様、年齢のリミットは迫っていました。

前回のブログの通り、夫の中では自力(不妊治療も含め)で妊娠するなら子育てもありだけど、あえて養子縁組してまで子育てはしなくてもいいという考えでした。私も、絶対に養子縁組したい!!という気持ちではなかったけれど、一緒に考えて欲しかったというのが一番の気持ちです。

残りの人生を考えた時、今まで自分が歩んできた人生の中で得てきた感覚や感情、見てきたものや美味しいもの、海を素敵に思う気持ちなどを子供に伝えたいという欲求に気づきました。
私の家庭は複雑だったので、「こんな親になりたい、子供の思いに立った子育てをしたい」「安心できる家庭」という“将来の夢“は中学生から積み重ねていたようです。

流死産を経験し、自力で産むことはもう限界だとわかっています。養子縁組の選択肢が無い場合、私が子供を育てることはもうありません。何も後世に残せないんだな、それは寂しいなぁ、余生を想像すると身を半分削られるような思いです。子育てへの思いを注ぐ対象を失いこれからどうしたら良いのだろう、その思いは他で代用できるようなものではないことは自分自身が一番知っています。まだ子育てをしていないのに、子がいないのに、目には見えないのに不思議ですね。大きなものを失った、「喪失」状態でした。
子育てができないということが私の生きがいや、やりがいに大きく影響していることを、夫は気づいていませんでした。不自由の無い暮らしの中でニコニコ笑っているから“妻は人生を楽しんでいる、幸せ“と思っているようでした。

そして、夫に長い手紙を書きました。

歩んできた幼少期の体験から子育てへの思いが募り、今に至ること。自分のために何かをすることで満足を感じるよりも、誰かのために何かがしたいこと。周囲から褒められたり、讃えられることに関心がなく、そんなことよりも一人の人間が成長し育っていく様をそばで見守り、一緒に泣いたり笑ったり、苦労したいこと。あなたは家庭円満と思っているかもしれないけれど、そうではない。描いている幸せの形が違い過ぎると書きました。

夫は手紙を読み「いろいろ考えているんだね〜・・・」と言い、次の言葉はまさかの「今日のご飯は?」でした。
「ナイヨ!!(怒)」と言い私は部屋に引きこもりました。

数ヶ月経ち、レストランで食事をしていた時に不妊治療、次どうする、する?しない?という話になりました。美味しいレストランでも不妊治療の話・・・本当に何年こんなことを繰り返しているんだろう、もううんざりですね。その流れで養子縁組の話にもなり、夫がそれまで考えていたのかいないのかわかりませんが、

「君との人生だから君に付き合うよ」
と言ったのです。

え、今なんと?というくらい驚きました。
養子縁組しよう!ということを決めたわけではないんだけれど、人の気持ちを尊重した言葉を発した夫に驚き、成長さえ感じました。全ては自分が一番、自分の自由時間を割かれるのは我が子でも嫌という人、「俺と結婚しているお前は幸せ者」的な考え方の人が、まさかそんな言葉を言うとは。
なんか変なものでも食べたのだろうかと心配しました。

養子縁組のシンポジウムに夫を初めて連れ出し、社会的養護の子供の状況を学びました。夫は、虐待によって悲しい思いをしている子供のことや、乳児院・児童養護施設で暮らす子供にも関心を寄せるようになりました。 その後、里親登録をトントンとしたわけではなく、外から見ると特に何も変わらず普通に生活しています。ただ、私の気持ちは晴れました。

先にも書きましたが、日本の養子縁組制度は整っておらず、8〜9割が施設養育です。いくら強く希望しても赤ちゃんに出会えるかどうかは「縁」。ただ、養子縁組を夫婦で考えたということと、私の気持ちを受け入れてくれたという事実は残りました。私はこの先の残りの人生を過ごしながら、夫のあの時の言葉をありがたく感じるでしょう。

これからどうなるかわからないけれど、思いやりのある夫婦としてしばらくは歩めそうです。

つづく

はじめての不妊治療

はじめての不妊治療の方に向けて、「不妊治療とは」「セルフチェック」「不妊治療の流れ」「治療方法」「運命の病院に出会う5つのコツ」「初めて体験」「パートナー(男性)の不妊について」「不妊治療用語集」をまとめました。

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