もくじ
小さな歯がようやく生えてきて、我が子の成長が実感できたころ、赤ちゃんのお口の中から、「ギリギリ」「キリキリ」「カリカリ」と異音がするのを耳にして、驚く親は珍しくありません。
実際、赤ちゃんがかわいい歯で歯ぎしりをするなんて、想像もしないし、聞いたこともないという人がほとんどです。
歯ぎしりというと、顎関節症など大人の病気とイメージされることでしょう。
どうして赤ちゃんが歯ぎしりをするのでしょうか?
赤ちゃんの歯ぎしりについて、原因や対処法などについてわかりやすく解説します。
赤ちゃんの歯ぎしりについて
赤ちゃんの歯ぎしりは、生後8〜10ヶ月くらいから始まってくることが多いです。
もちろん個人差はありますので、もう少し早いうちから始まることもないわけではありません。
赤ちゃんの歯ぎしりの割合ですが、赤ちゃんの1〜2割に認められるといわれています。
仮に赤ちゃんを100人集めれば、そのうちの10〜20人は歯ぎしりをしている割合になるわけですから、割合的には比較的多いとみることも出来そうですね。
ですので、ご自身の赤ちゃんが歯ぎしりをしていても、それほど気にしすぎることなく、温かく見守ってあげてください。
そんな赤ちゃんの歯ぎしりですが、多くの場合2歳頃には自然とおさまってくることが一般的です。
これにも個人差がありますから、期間は多少前後します。
赤ちゃんの歯ぎしりの原因について

赤ちゃんが歯ぎしりをする原因は、いろいろあると考えられています。
歯ぐきがむずがゆい
歯が生えてくる時、周囲の歯ぐきをおしのけるようにして生えてきます。
これが原因で、むずがゆさを感じている可能性があります。
赤ちゃんは言葉を離すことが出来ないので、実際にむずがゆいか聞くことは出来ませんが、6歳臼歯が生えてくるような幼稚園から小学校低学年の年齢の子どもにも同じような現象が起こっています。
6歳臼歯が生えてくるところは、最も奥の乳歯の後ろ側です。
つまり何も生えていないところなんですね。いずれの歯も生えていない歯ぐきから、新しく6歳臼歯が生えてくる時に、歯ぐきのむずがゆさを訴えてくることがあります。
6歳臼歯の後方にあたる第二大臼歯が生えてくるときも同じです。
こうしたことから、歯が生えていない歯ぐきのところから、新たに乳歯が生えてくる赤ちゃんにも同じような現象が起こっているのではないかと考えられます。
生えてきた歯を確認している

赤ちゃんの前歯は、多少の個人差はありますが、おおむね8〜9ヶ月頃に生え揃います。そのころに、前歯だけで歯ぎしりをしている赤ちゃんがいます。
このときもしかしたら、上下の歯を擦り合せることで、歯の位置を確認している可能性が考えられます。
実は、大人の場合でも同じようなことが起こっていることがあるのです。
通常は歯がたくさんありますので、どこでも噛めますから歯の位置を意識することはないのですが、むし歯や歯周病などになって歯を失い、その数が少なくなってくると噛み合わせることが出来ない歯が増えてきます。
すると、歯の位置がわからなくなってくることがあります。
歯の本数が少なくなっていることもあり、歯の位置がわからないと噛みにくいので、無意識に上下の歯をすりあわせることで歯の位置を確認するのです。
また、大人は永久歯以降に生えてくる歯はないのですが、むし歯治療で新たに被せものを入れたり、インプラントを入れたりして、噛める歯が増えると、新しい歯を噛み合わせて噛み合わせを確認したりします。
赤ちゃんも生え始めの頃は歯が少ないので、同じように歯を擦り合せることで、歯の位置を確かめている、歯が増えると新しく生えた歯を確認している、そんな可能性が考えられています。
その時の音が歯ぎしりとして聞こえているのかもしれませんね。
噛む力を鍛えている
乳歯が生えてきても、顎の力が弱ければ、食べ物をしっかり噛めません。
しっかり噛むということは、顎の骨を刺激して、顎の骨の成長を促しますので、赤ちゃんに限らず成長期の子どもにとって、とても大切なことです。
そこで赤ちゃんは歯ぎしりをすることで、顎の筋力を鍛え、噛む力を強くしている可能性が考えられます。
大人の歯ぎしりも、顎の筋力を維持するためではないかという仮説もあるほどです。
この仮説は、人類はその長い歴史のほとんどの期間で飢餓に悩まされてきたというところに基づいています。
長い間食べ物にありつけず、顎の筋肉を使わないでいると、いざ食べ物を見つけても、筋力が低下して噛めなくなってしまっているかもしれません。
そうなると、生きていけなくなります。そこで、歯ぎしりをすることによって、顎の筋肉が衰えなくしているのではないかという説です。
ストレスを感じると歯ぎしりをするというのは、飢餓=ストレスという図式の名残ではないかともいわれています。
赤ちゃんが飢餓状態にあるというわけではありませんが、歯ぎしりをすると顎の筋力が鍛えられる点は大人と同じです。
歯ぎしりをすることで、筋力を鍛えて噛む力を強くしているのかもしれませんね。
遊びのひとつかも
いままでなかった歯を擦り合わせてみると、音が鳴ります。もしかしたら、この現象が面白くて遊んでいるのかもしれません。
どれくらい続くなら要注意なの?
赤ちゃんの歯ぎしりは、生え始めの頃に起こることが多く、乳歯が生え揃ってくるにつれて減少していく傾向があります。
もし、2歳ごろになっても、まだ歯ぎしりをしているのなら注意が必要です。
この年齢以上歯ぎしりを続けていると、歯がすり減るリスクが生じるからです。
不安なときは、小児歯科で相談するといいでしょう。
歯並びへの影響は?
大人の場合、歯ぎしりを続けると、歯がすり減ったり、歯並びが外側に向けて歯が傾斜して広がったりします。
しかし、赤ちゃんの場合、歯ぎしりで歯並びが悪くなってくる可能性は低いと考えられています。
一時的に上下の前歯が受け口のようになることもありますが、多くの場合、最後の乳歯が生えてくる3歳前後には自然と解消されてきます。
もちろん、赤ちゃんの歯ぎしりくらいでは、歯がすり減ってくることもありませんし、歯が欠けることもないです。
対処法
基本的に、赤ちゃんの歯ぎしりは生理的なものである、つまり正常なものであると考えられ、1歳頃までの赤ちゃんでは比較的よくみられます。
したがって、特に歯ぎしりを無理にやめさせなければならないということもありません。
多くの場合は、特別な対処は必要なく、経過観察でいいと思われます。
どうしても音が気になってくるなら、歯がためを噛ませてみてください。
ただし、2歳をこえても歯ぎしりが続いているようなら、一度歯科医院を受診して、相談した方がいいでしょう。
まとめ
1歳前後の赤ちゃんが歯ぎしりをすることは、生理的なものと考えられます。
無理にやめさせる必要もないですし、歯並びや噛み合わせに悪影響を及ぼす可能性もまず心配ありません。
したがって、経過観察で十分です。
歯ぎしりによって生じる音がどうしても気になる場合は、歯がためなどを与えて、かませるといいでしょう。
赤ちゃんの歯ぎしりは、歯がどんどん生えてくるに従って、徐々におさまってきます。
しかし、2歳を超えても歯ぎしりを続けているようなら、歯科医院で相談なさることをお勧めします。