かわいい我が子の歯に、むし歯が出来たらいやですよね。
むし歯が出来て、痛みに苦しむ姿や泣きながらむし歯治療を受けるところなんて、想像もしたくありません。
出来ることならむし歯にならないよう、予防したいところです。
そこで、乳歯のむし歯の特徴や永久歯のむし歯との違い、そしてむし歯の予防法などをわかりやすく解説します。
乳歯ってなに?
乳歯のむし歯について理解する前に、まず乳歯について理解しましょう。
●乳歯とは?
永久歯に先立って生えてくる歯のことで、通常は3歳頃に全て生え揃い、10歳前後までに永久歯に生え変わります。
乳歯は、前から順番に乳中切歯、乳側切歯、乳犬歯、第一乳臼歯、第二乳臼歯となり、これが左右の上下顎に生えるので、全部で20本になります。
乳歯は、永久歯と比べて白く、そしてサイズも小ぶりになります。
前歯部に多いのですが、癒合歯とよばれる2本の歯がくっついて1本になった乳歯がみられることがあります。
生え始める年齢
乳歯は、まず最初に下顎の前歯が生えてきます。
下顎の前歯が歯ぐきから顔をのぞかせるのが、生後8〜9ヶ月頃です。
もちろん個人差がありますので、日本小児歯科学会によりますと最も早い場合で生後4ヶ月頃から、遅いときは1年5ヶ月といいます。
同じ下顎の前歯でも生えてくる年齢にかなりの幅があることがわかります。
生えてくる順序
乳歯が生えてくる順序は、各人でおおむね共通です。
まず下顎の乳中切歯から生え始めます。
- 下顎乳中切歯
- 上顎乳中切歯
- 上顎乳側切歯
- 下顎乳側切歯
- 上顎第一乳臼歯
- 下顎第一乳臼歯
- 上顎乳犬歯
- 下顎乳犬歯
- 下顎第二乳臼歯
- 上顎第二乳臼歯
の順です。
最後の第二乳臼歯が生えてくるのは、2年6ヶ月前後(最短で1年1ヶ月、最長で3年8ヶ月)ですので、すべての乳歯が生えそろうには、2年あまりの期間がかかることがわかります。
生え変わらないことも
乳歯は通常はいずれ、適切な時期がくると永久歯に生え変わります。
ただし、中には、生えてくるべき永久歯が元々ない、永久歯が埋まったままで生えてこないなどの理由で、乳歯が永久歯に生え変わらないことがあります。
これは、第二乳臼歯に多い傾向があります。
もし、生え変わるのが遅いかもしれないと思ったら、レントゲンを撮影してもらったほうがいいでしょう。
乳歯のむし歯と永久歯のむし歯って同じなの?
むし歯は、ストレプトコッカス・ミュータンス、いわゆるむし歯菌が産生する乳酸という酸によって歯が溶かされて、歯の表面に穴をあけていく病気です。
これは乳歯も永久歯も同じです。
ところが同じむし歯でも乳歯と永久歯には、その症状に違いがあります。
乳歯と永久歯の構造の違い
歯の最も外側の層をエナメル質、その内側を象牙質といい、象牙質の中に歯髄、いわゆる歯の神経があります。
エナメル質の硬さは、骨よりも硬く、身体の中では最も硬い部分といわれるほどで、その硬さで噛むときの力から象牙質を守ってくれています。
こうしたエナメル質と象牙質から構成されるという構造自体は、乳歯も永久歯も同じなのですが、乳歯の方が永久歯と比べると、エナメル質も象牙質も軟らかいです。エナメル質の厚みも薄いです。
進行が早い
乳歯は永久歯と比べると、エナメル質も象牙質も軟らかく薄いため、むし歯菌に弱いといえます。
そのため、一旦むし歯になると、永久歯よりも早く進行していきます。
実際、エナメル質が薄いので、歯の神経の付近にまでむし歯が広がるのも早いです。
気がつきにくい
年齢が低いほど、痛みを感じる痛覚の発達が未熟です。
そのために、むし歯になっても痛みを感じにくいので気がつきにくいのです。
そのために、大人のように痛みが出る前の段階で、歯がしみる、噛んだときの感じがおかしいなどの違和感を感じにくく、気がついた時には大きな穴が開いているということも珍しくありません。
乳歯のむし歯っておうちでも見つけられるものなの?
乳歯のむし歯は、場所によっては見つけにくいですが、決して見つけられないわけではありません。
見つけやすいのはいつ?
見つけるタイミングは、食後の歯みがきのときでしょう。
乳歯用の歯みがき粉は、泡立ちにくくしてありますが、泡立たないことはなく、やはり泡立ちが起こると見えにくくなってしまいます。
そこで、歯みがきが終わった後に改めてお口全体の歯の状態を一度観察してみてください。
歯みがき前でもいいのですが、食べ物が挟まっていたりするのでよくわからないことが多いので、歯みがき後の方がわかりやすいですね。
見つけるためのポイントはあるの?
まず、見てほしいポイントは歯の色です。
むし歯は、白色→茶色→黒色という順番で進行していきます。
歯に他の部分と異なる色の変化が生じていないかを確認してください。
その次に、欠けているところがないか、穴が開いているところがないかをみましょう。
歯と歯の間のむし歯は見つけにくいです。上顎の奥歯ならなおさらです。
もし、常に同じところに食べ物が挟まるなら、もしかしたら歯と歯の間にむし歯が出来ているのかもしれません。
見えにくいところもありますので・・・
ご家庭でむし歯をチェックするポイントは上記の通りです。
しかし、光が届きにくい上顎の奥歯はもちろんですが、歯と歯の間も含め、見えにくい箇所はいくつか存在します。
ですので、定期的に歯科医院でチェックしてもらうことをおすすめします。
乳歯のむし歯っていずれは生え変わるから放っていても大丈夫なの?
生え変わるからといって、乳歯のむし歯を放置してもいいのでしょうか?それは間違いです。
後継永久歯にむし歯菌が感染する
むし歯が進行していくと、歯の神経を腐らせてしまいます。
腐った歯の神経は、膿を生み出すようになり、やがて、歯根から出て根の先に膿をためるようになります。
乳歯の根の先には、骨の中で永久歯が生えてくる順番を待っています。膿の正体は、細菌や白血球の死骸などです。
そこに膿が達すると永久歯が、細菌に感染してしまいます。
この細菌の正体は、むし歯菌です。生える前から永久歯がむし歯菌に感染してしまうことになるのです。
歯並びが悪くなる
むし歯になると、歯の形が変わっていきます。
歯と歯の間に生じると、例え小さなむし歯であっても、歯の幅が小さくなります。
もちろん、進行した大きなむし歯になると、より歯が小さくなってしまいます。
小さくなると後から生えてくる永久歯のスペースが足りなくなってしまい、歯並びが悪くなる原因になります。
顎の骨の成長に悪影響が出る
顎の骨は、食べ物をしっかり噛むことで、顎の骨が刺激を受けることで成長が促されるようになっています。
むし歯になり放置したままでいると、十分噛むことが出来なくなります。
しっかり噛めないので、顎の骨が刺激されなくなり、顎の骨の成長に悪影響が出ます。
歯医者さんに行くメリットってなに?

むし歯がなくても歯医者さんに通うメリットって何なのでしょうか?
むし歯を早期発見できる
むし歯がないと思っていても、もしかしたら気がついていないだけかもしれません。
上顎の奥歯など見えにくいところにむし歯が出来ていても、気がつかないということは珍しくありません。また、歯と歯の間のむし歯も気がつきにくいものです。
そんな気がつかない程度の小さなむし歯も早期に発見できるということは、歯医者さんに通うメリットのひとつですね。
むし歯の歯みがきの方法を教えてもらえる
歯医者さんでは、磨けていないところを専用の染色液で染め出して、わかりやすく示した上で、各人にあった効果的な歯みがきの方法、子どもの場合は仕上げみがきのポイントを教えてもらえます。
むし歯予防の方法を教えてもらえる
年齢に応じたフッ素配合歯みがき剤の量や、フッ素配合ジェル、フッ素配合洗口剤など、 フッ素の効果的な使い方、使う上での要点を教えてもらえます。
また、希望すれば、歯科医院専用のフッ素を歯に塗布してもらうこともできますよ。
歯医者さんへ行こう!!

歯医者さんの選び方
一般的な歯科医院ならどこでも診てもらえます。
小児歯科と標榜してある歯科医院ならなおよしです。
藪医者の門構えではありませんが、見た目で選ぶよりは、口コミなどの評判や通院のしやすさ、車で通院するなら駐車場の便利さなどを基準にすることをおすすめします。
忙しすぎるところでは、時間を十分にとってもらえないおそれがあります。
小さな子どもは、大人以上に時間をかけなければならないので、忙しすぎるところは考えものかもしれません。
ただし、矯正の専門歯科医院では、診てもらえないこともあるので注意が必要です。
歯医者さんの検診をするタイミング
歯医者さんに通院する頻度は、歯みがきが出来ていない子、むし歯の多い子、しっかり磨けている子、むし歯がない子、いろいろ条件は異なりますからそれぞれ異なります。
むし歯がない、きちんと磨けていると思っても、少なくとも年2回程度は歯科医院に通った方がいいでしょう。
誕生月とその半年後の裏月を目安にすれば、忘れにくいですね。
もし、むし歯が多いなら、3〜4ヶ月おきに通う方がいいですよ。
歯医者さんではどのようなことをする?
歯医者さんでは、まずお口全体をチェックします。
具体的には歯の本数は何本か、かけているところや変色しているところはないか、すり減り具合、歯ぐきの状態、磨き残しの有無、プラークの付着度合いなどです。
指しゃぶり等の癖があるかどうかも診ます。
そして、磨き残しがあるなら歯みがきの指導と可能な年齢なら練習、プラークが付いているなら歯の掃除、むし歯があるならむし歯の治療を行ないます。
フッ素に違いはあるの?
フッ素は、むし歯予防にとても効果的です。
歯科医院でもむし歯予防にフッ素を使います。
ご家庭でもフッ素でむし歯予防をすることができます。
両者の間には何か違いがあるのでしょうか?実は、フッ素は、フッ素そのものではなく、フッ化物として使っています。
歯科医院で使うフッ素
歯科医院では、歯にフッ化物を塗布してむし歯予防を図ります。
フッ素塗布で使われるフッ化物は、リン酸酸性フッ化ナトリウム(APF)、2%フッ化ナトリウム(NaF)、8%または4%フッ化第一スズ(SnF2)です。
APFとSnF2は、年1〜2回の塗布で効果が出るので、通院回数を少なく出来ます。SnF2はむし歯菌の発育を抑える効果が高く、むし歯菌の多い子どもに有用です。
しかし、精製してから1時間以内に使用する必要があり、製剤として市販されておらず、あまり行なわれていません。
NaFは、保存性もよく市販の製剤もあり使いやすいのですが、1週間あたり1〜2回、連続4回塗布しなければならないという欠点があります。
ご家庭で使うフッ素
ご家庭では、フッ化物配合歯みがき剤やフッ化物の洗口剤を使って、むし歯を予防します。
①フッ化物配合歯みがき剤
歯みがき剤に配合されているフッ化物は、フッ化ナトリウム(NaF)やモノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)、フッ化第一スズ(SnF2)の三種類です。
このうちNaFが歯みがき剤の事実上の標準といってもいいほどに普及しています。
MFPは、フッ素がイオン化しにくいので血液中に入り込みにくく、安全性が高いです。
そのためより高濃度のフッ化物を配合できますので、たとえば3〜5歳の乳幼児でも使えるフッ化物濃度1000ppmの歯みがき粉として販売されていたりします。
SnF2は、歯科医院でフッ素塗布にも使われる効果の高いフッ化物なのですが、SnF2配合の歯みがき剤は、ジェルタイプのみですので研磨剤が含まれていません。
そこで、それ以外のフッ化物配合歯みがき剤で歯みがきをした後に、SnF2歯みがき剤で磨くようにするといいでしょう。
②フッ化物洗口
フッ化物の配合された洗口剤(うがい薬のこと)で、うがいをすることでむし歯を予防する方法です。
むし歯予防の効果が高いとして、厚生労働省も推奨しています。
うがいがしっかりできる年齢なら誰でもできます。特に4〜14歳の年齢層で予防効果が高まるとされています。
洗口のペースですが、週一回でも毎日でも効果に差はほとんどありません。
週一回でもいいのですが、それだと忘れがちになるというなら、毎日したほうがいいでしょう。
方法は簡単です。適量をカップにとって、歯みがきの後に30秒程度うがいをするだけです。
赤ちゃんを歯医者さんへ行くときのコツ
歯医者さんが初めてというときは、恐怖心を植え付けないように、最初は診療椅子に座るだけにし、環境に少しずつ慣れてもらうようにします。
環境に慣れてきたら、家族ではない他人がお口の中に触れることを理解してもらうため、歯科医師や歯科衛生士が歯ブラシを使って歯みがきをします。
歯ブラシに慣れたら、器械の歯ブラシで歯を磨きます。
手で磨く歯ブラシとは異なり、 音や振動があることを知ってもらいます。
これになれたら、注水下で水を吸引しながらの歯みがきに移行します。
この後に、小さなむし歯の治療を開始します。
歯科医院によって少し違いがあると思いますが、どこでも徐々に慣れてもらうところから始める点は同じです。
家庭でできる乳歯のむし歯予防法ってどんなものがあるの?

日常生活で、どのような点に注意しておけばむし歯を予防できるのでしょうか。
唾液に触れさせない
むし歯の原因であるストレプトコッカス・ミュータンスなどのむし歯菌は、他の人からその人の唾液を介してうつります。
一度お口の中に入ってしまったら、まず除去することは出来ませんので、入り込まないようにすることが大切です。
そこで、
- 大皿料理は取り箸を必ず使う
- 他の人の口に入ったお箸やスプーン、フォークは絶対に子どもの口に入れない
- 他の人がかじった食べ物は与えない
- 他の子どもが口に入れたおもちゃも口に入れないように注意する
こうした点を注意してください。
特に3歳までは厳重に注意しましょう。
歯みがきを毎食後しましょう
歯みがきは基本的に毎食後してください。
間食も含めてです。歯みがきの時、フッ素配合の歯みがき剤を使うといいでしょう。
そして、寝る前はフッ素ジェルを塗っておくとなお一層効果が高まります。
お茶かお水で
ジュースは砂糖がたくさん含まれており、むし歯のリスクがとても高い飲み物です。
食事や間食を含め、小さい頃からジュースに慣れ親しむと、それを飲むことが習慣化してしまうおそれがあるので、飲み物はお茶かお水にするようにしてください。
おやつにも注意を
甘いおやつは砂糖がたくさん入っています。
むし歯の原因になります。与えるときは、砂糖が入っていないようなおやつにしましょう。
歯磨きを嫌いにしないコツ
歯みがきを習慣化させるためには、嫌な思いをさせないことが大切です。そのコツを紹介致します。
赤ちゃんが歯磨き嫌いにならないコツ

まずは、歯ブラシに慣れてもらいましょう。
赤ちゃん用歯ブラシが販売されていますので、赤ちゃん自身に握らせて慣れさせるのもいいでしょう。
ただし、歯ブラシをくわえて歩かないように注意してくださいね。
食後に歯みがきをするのは大切ですが、嫌がるときは無理強いせず、落ち着くまで待ってから歯みがきをしてください。
そして、歯みがきの時、黙って黙々とするのではなく、話しかけたり、歌を歌ったりしながらするのもいいですね。
歯みがきを嫌いにさせないように気をつけてくださいね。
自分で歯磨きを始める頃に
だいたい生え揃ってくる2歳6ヶ月ごろになったら、自分で歯みがきをする練習を開始してください。
歯ブラシのもち方も覚束ないものですが、楽しく歯みがきが出来るように、そっと見守ってください。
そして、子どもさんが歯みがきをしているときは、隣に立って一緒に歯みがきをしましょう。一緒に磨くことで一体感を形成します。
子どもさんが自分自身で歯を磨き、きれいになったと思ったら、チェックしてたくさんほめてあげてください。
そして、最後には仕上げの歯みがきをしてあげてくださいね。
歯ブラシはどうするの?
子どもさんが自分で使う歯ブラシと、仕上げの時に大人が使う歯ブラシは、わけましょう。
つまり、歯ブラシが2本必要になります。
子どもさん用の歯ブラシは、好きなキャラクターの歯ブラシにするのもいいですね。
まとめ

乳歯は、いずれは永久歯に生え変わりますが、だからといってむし歯になったり、失ったりしてもいいわけではありません。
乳歯をむし歯から守るためには、歯みがきをしっかりするだけでなく、フッ素を使うこと、むし歯菌をうつさないことなど大切なポイントがいくつかあります。
また、大人と違って気がつきにくいという特徴もあります。
親御さんの目でチェックするだけでなく、歯科医院にも定期的に通って、診てもらっている方がいいですね。