母乳は、血液から作られています。
そのため授乳期間中は、いつもよりも多くのエネルギーを必要とします。
母乳は赤ちゃんの成長にとって大切なものです。
そのために、食事が母乳にどのような影響を及ぼすのかを知る必要があります。
しかし、質の良い母乳のために何を食べればよいのか、また逆に母乳の出を悪くする食べ物は何なのか悩むこともありますよね?
では赤ちゃんのために、どのような食事を心がければよいのでしょうか?
これから、授乳中に取りたい食べ物と上手なおやつの食べ方について、さらに控えるべき食べ物についても詳しく紹介します。
また、授乳中に起こりやすい「乳腺炎」の原因や症状、予防方法についても詳しく解説します。
母乳栄養とは

母乳栄養は、ママと赤ちゃんの両方に利点があります。
赤ちゃんの利点は、免疫力が高くなる、ミルクに比べて消化しやすく負担が少ない、アレルギーを起こしにくいことがあげられます。
一方、ママにとっては、母体の回復が促されること、妊娠中に増えた体重が減りやすいこと、さらに赤ちゃんとの関係を良好にすることが利点としてあげられます。
栄養の基本
授乳中は、赤ちゃんの成長のためにより多くのエネルギーと栄養を必要とします。
この時注意すべきなのは、エネルギーを増やすだけでなく、食事のバランスを考えること。
しかし、バランスの良い食事といっても、献立を考えるのはなかなか難しいですよね?
厚生労働省の「妊産婦のための食事バランスガイド」を活用してみましょう。
食事バランスガイドは、コマに例えて1日に必要な食事の目安を示したものです。
「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」に分けられており、これを組み合わせて食事を構成します。
これは、料理を「1つ」と考え、必要な栄養を必要な分、組み合わせるだけで簡単に活用できるため便利です。
主食について

主食は、米やパン、麺など、食事の中心となるものです。
主菜に含まれる炭水化物は、体を動かすエネルギーとなる大切なものです。
1つ分の目安は、ご飯小盛り1杯、食パン1枚、ロールパン2個となります。
1日分の摂取量は5〜7つ分ですが、授乳期は1つ分プラスします。
副菜

野菜
野菜には、ビタミンやミネラルが豊富に含まれており、ママと赤ちゃんの健康維持に欠かすことのできないものです。
野菜の1日の摂取量は350g以上とされていますが、足りないのが現状です。
この量を毎日食べるためには、さまざまな料理に使用するなどの工夫が必要です。
小鉢1皿分を1つ分と考え、1日6〜7つ分食べるようにしましょう。
野菜たっぷりのスープなどは、野菜をたくさん食べることができるうえ、体も温まるためおすすめの料理方法です。
主菜

肉、魚、大豆製品、卵は、体を作るものになるたんぱく質が豊富に含まれています。
妊娠中から貧血気味のママは、意識して赤身の肉や魚を食べるようにすると貧血の改善に役立ちますよ。
1つ分の目安は、納豆1パック、目玉焼き1個分です。
焼き魚やスクランブルエッグは2つ分になり、ハンバーグや唐揚げは3つ分になります。
授乳中は4〜6皿分が目安ですが、取りすぎないように注意しましょう。
牛乳・乳製品

牛乳や乳製品にはカルシウムが豊富に含まれています。
日本人はカルシウムの摂取が少ないと言われています。
また、授乳期は一時的にママの骨量が減少しやすいため、意識して取るようにしましょう。
カルシウムは大豆や小魚などにも含まれていますが、牛乳や乳製品の方が吸収率が良いと言われています。
1つ分の目安は、牛乳コップ半分、ヨーグルト1カップです。
果物

ビタミンやカリウムが豊富に含まれている果物は、おやつにもおすすめです。
1つ分は、みかん1個、リンゴ半分、ぶどう半房になります。
1日の摂取目安は3つ分となります。
母乳に必要な栄養素は?
母乳には様々な栄養素が含まれる
母乳は、赤ちゃんの食事であり、生きていくための多くの栄養素が含まれています。
数えきれない成分が含まれていますが、主にたんぱく質、糖質、脂質、ビタミン(葉酸など)、ミネラル(カルシウム、鉄分など)、アミノ酸などです。
授乳中の母親には通常より多くの栄養が必要
授乳中は母親自身のための栄養に加えて、母乳のための栄養をとらないといけません。
授乳中のカロリーとしては通常の+350キロカロリーなので、ご飯茶碗大盛程度で一日としてはたいした量ではありません。
授乳中には葉酸、カルシウム、鉄分、DHAが不足しがち
基本は、不足分をバランスよく食べることが一番ですが、特に気を付けて摂取した方が良い栄養素として「鉄分」「葉酸」「カルシウム」「DHA」があります。
それらは、母乳に多く奪われてしまうので、不足すると母親が栄養不足になりますし、ひどく不足した場合は、母乳に十分な栄養がいかず、赤ちゃんも栄養不足になってしまいます。
バランス良く食事をし、不足分を補う
バランスの良い食事加え、授乳中は、不足しがちな栄養を補うよう意識していきましょう。
上記の「鉄分」「葉酸」「カルシウム」「DHA」などが不足しがちな栄養素は、非妊娠時、非授乳時よりも多く摂取するように推奨されています。
ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、納豆などはお勧めの食材

野菜
ひじき、納豆、ほうれん草、レバーなどは鉄分が豊富ですし、モロヘイヤ、小松菜、しらすなどはカルシウムが豊富です。
また、葉酸が多い食品としては、ブロッコリーや納豆、枝豆などがあります。
上手く食事の中で取り入れていくのが理想ですが、授乳中用のサプリメントもお勧めです。
授乳中に良い食べ物

授乳中のママは、いつもより多くのエネルギーや栄養を必要とします。
赤ちゃんに母乳をあげるためには、バランスの良い食事が基本ですが、母乳の質を良くするために食べて欲しい食べ物もあります。
どのようなものを食べればよいのか詳しくみていきましょう。
和食にしましょう
母乳は、ママの血液から作られています。
食事の内容よっては、血液がドロドロになり流れが悪くなってしまいます。
一般的に洋食やファーストフードは、塩分や脂分が多いため血液の流れを悪くすると言われています。
一方和食は、油の使用量が少なくヘルシーであるため、授乳中のママの食事に適しています。
しかし和食の中でも煮物は、塩分を多く含むため取りすぎないよう注意しましょう。
おすすめしたい食べ物
授乳中におすすめしたい食べ物は、根菜類、芋類、青菜類、海藻類や、発酵食品です。
大根やゴボウなどの根菜類や寒い地域でとれる野菜には、体を温める効果があります。
生野菜は体を冷やすため控えたい食べ物ですが、ほうれん草などの青菜は母乳の質を良くすることに加え、鉄分も多く含まれるため積極的に食べるようにしましょう。
また、ネギやしょうがなどの薬味にも体を温める作用があります。
血液をサラサラにする効果があるヨーグルトや納豆などの発酵食品も、毎日食べるようにしましょう。
水分をしっかりとりましょう
授乳中は、水分をしっかりととることが大切です。
しかし、冷たい飲み物を飲むと、体が冷えると血流が悪くなってしまいます。
なるべく冷たい飲み物を控え、温かい飲み物を取るようにしましょう。
母乳の分泌を促すと言われるローズヒップやルイボスティーなどのハーブティーや、ノンカフェインのお茶などを選びましょう。
授乳中に良くない食べ物

授乳中は、質の良い母乳を作るために、バランスの良い食事を取ることが大切であることはわかりましたね?
食べ物によっては、母乳の分泌量や良くない影響を及ぼすものもあります。
授乳中は控えた方がよい食べ物や飲み物をみていきましょう。
控えた方がいい食べ物
油分の多い揚げ物や肉類は、血液の流れを悪くなるため控えて欲しい食べ物です。
また、体を冷やすと言われている白砂糖を使用した、洋菓子やチョコレートなどや甘い飲み物は、控えるようにしましょう。
スナック菓子は、油であげているものが多いうえ、塩分や添加物も多く含まれています。
これらを食べると、母乳の味にも影響すると言われています。
カフェイン

コーヒーや紅茶に含まれるカフェインは、15〜30分で母乳に移行すると言われています。
赤ちゃんがカフェインを摂ると情緒不安定になり、泣く回数が増える、寝つきが悪くなるなどの症状が現れることもあります。
控えることが望ましいのですが、どうしても飲みたい場合は、1日1〜2杯程度までとし、授乳後に飲むようにしましょう。
できれば、ノンカフェインのコーヒーや紅茶に変更することをおすすめします。
アルコール

血液中のアルコール濃度は、飲酒30〜60分後に濃くなります。
ママが飲んだアルコール量の約2%が母乳に移行すると言われています。
アルコールを含んだ母乳は、赤ちゃんにとってよいものではありません。
そのため授乳中は、赤ちゃんのために禁酒することをおすすめします。
ノンアルコールのビールやチューハイなどもありますが、中には微量のアルコールが含まれているものもあるため注意が必要です。
授乳中の上手な食べ方
産後は赤ちゃん中心の生活になるため、食事の時間が不規則になりがちです。
しかし、質の良い母乳のために食生活を整えることはとても大切なことです。
さらに、赤ちゃんの成長に伴い開始になる離乳食や幼児食などは、子どもの食生活の基本となるものです。
もし自分の食事に偏りがある場合は、今のうちに理想的な食事に変更することによって自分や赤ちゃんのためにもなりますよ。
規則正しい食事
赤ちゃんの授乳のタイミングに合わせると、ママの食事時間がずれたり、時には食べられなかったりすることもあるでしょう。
しかし1食欠食するだけでも、その日に必要なエネルギーや栄養の確保が難しくなってしまいます。
ママの体が栄養不足になると、母乳の量が減少や栄養不足の母乳になるため赤ちゃんの成長にも影響が出ることも。
たとえママが栄養不足だとしても、体の蓄えを利用してなんとか母乳を作ろうとします。
すると、貧血が悪化したり体重が減ったりしてしまうこともあります。
授乳中は、なるべく規則正しくバランスの良い食事をとることを心がけましょう。
そのために、すぐに食べられるようおにぎりなどを準備する、食べやすく果物を切っておくなど工夫するとよいでしょう。
上手にオヤツを食べる
おやつは楽しみとして食べることが多いのですが、授乳中は食事で不足したものを補う意味でとても大切なものです。
おやつに向いているものは、小さめのおにぎりやパン、チーズやヨーグルトなどの乳製品です。
この時、なるべく添加物や砂糖が使用されている食べ物は控えるようにしましょう。
また、果物も糖分が多いため取りすぎないよう気をつける必要があります。
授乳の合間に、すぐ食べられるように準備しておくとよいでしょう。
たまに食べたいものを食べるために
赤ちゃん中心の生活を送り、母乳のために好きなものを我慢し続けるのは辛いことですよね?
理解していても「たまには我慢せず食べたいもの食べたい!」そう思うこともあるでしょう。
時には、我慢せずに食べたいものを食べてもいいのですよ。
母乳を保存しよう
授乳中には控えたいものを食べたい時は、母乳の保存しておき、それを与えるようにします。
母乳の保存方法は、冷蔵と冷凍の2種類があります。
どちらの方法でも、清潔な状態で保存すること、人肌程度に温めて使用すること、残ったものは使用しないこと、なるべく早く使うことを守りましょう。
冷蔵の場合は、搾乳した母乳を哺乳瓶に入れ、蓋をして保存します。
保存の時間はなるべく短時間とし、遅くても72時間以内に使用するようにしましょう。
冷凍の場合は、専用の母乳パックに1回分の量を入れ、空気を抜いて保存します。
自然解凍または30〜40℃のお湯で解凍して使用しましょう。
ミルクや哺乳瓶に慣れる

母乳を飲んでいる赤ちゃんにとって、ミルクの味や哺乳瓶の乳首は慣れないものであるため、初めて使用する時は嫌がることもあるでしょう。
そのため赤ちゃんの機嫌がよい時に、哺乳瓶やミルクを試し、徐々に慣れてもらうことが大切です。
ミルクの温度や銘柄、また乳首の形や材質など、赤ちゃんそれぞれに好みがあるのでさまざま試してみるとよいでしょう。
母乳と食べ物に関連した疑問
母乳育児は気を付けることが多く、疑問も多くなります。
いくつか例をあげてみましたが、個人差も大きくはっきりと答えがあるものではないので、疑問に思った際は、自分で専門家に聞いてみましょう。
餅、チョコ、乳製品などはどれぐらい食べていいの?

何となく、母乳が詰まりやすいと知っているけど、食べてはいけないわけではない…と多くの方はご存知ではないでしょうか。
その通りで、決まった答えがないので、体調を見ながら少量ずつにし、イベント時だけなど食べ過ぎないようにするのも良いでしょう。
また、何となく甘い物が食べたいだけの時は、和菓子にするなど、代替え方法があればそちらにした方が安心です。
コーヒーなどのカフェインはいいの?

妊娠中、授乳中にカフェインは良くないイメージがありますよね。
確かに、母乳にも移行し、量が多いと赤ちゃんの寝つきが悪くなってしまうなど影響もありお勧めではありません。
しかし、アルコールのように悪影響を与えるほどではないので、一日一杯程度で授乳直後に飲むなど量を決めて飲むと良いでしょう。
お酒を飲んでしまったら、いつまで母乳はあげられないの?

非常に個人差が大きい問題ですが、アルコールを飲んでしまった場合、母乳にアルコールが移行するので、飲酒後2時間は授乳を避け、その間の母乳は搾乳し廃棄します。
この2時間というのは、ビール1,2本程度のことなので、酩酊するまで日本酒を飲み過ぎてしまった場合は、8時間ほどかかるという研究もあります。
ポイントは、授乳後何時間経てばいいというわけではなく、体内にアルコールがある間に作られた母乳にはアルコールが含まれるので、搾乳し捨てることです。
飲み過ぎてしまった場合は、一日授乳は控えるなど気を付けましょう。
刺激の強い香辛料などは食べていいの?

香辛料
確かに、母親の食事が母乳に移行するのは事実で、香辛料の強い食べ物の食べた後の母乳を赤ちゃんが飲んでくれなかった、明らかに匂いが変化した、というのはよく聞きます。
香辛料などに関しても、どの程度移行するのか、どれくらい味が変化するのかは、専門家でも意見の別れるところで、アルコールのように絶対にダメというものではないですが、赤ちゃんの様子を見ながら授乳中は出来るだけ少なめにしておく、というのが良いかもしれません。
まとめ
- 母乳は母親の血液から作られるので、母親の食べたものが関係してくる。
- 母乳には様々な栄養が含まれ、母乳を作るために母親の栄養面に気を付ける必要がある。
- 母乳育児中は、バランスの良い食事が一番だが、鉄分・葉酸・カルシウムなどが不足しがちな栄養素の摂取にも気を付ける。
- 母乳がよく出るようにするには、身体をあたため乳房の血流を良くし、血液をサラサラにする。
- 母乳には、体をあたためる食事、脂肪分などが少なく母乳がつまりにくい食事が良い。
- 母乳育児中はストレスがたまりやすいが、時々、母乳を休んで好きなことをするなど気分転換もお勧め。
母乳育児中には、様々な疑問を感じると思いますが、わからないことは専門家に相談するようにしましょう。