皆さんの不妊治療体験談

今年の春、治療を止めることを決意「子どもを産むことができなかったという絶望を抱えて生きるよりも、何歳になっても育てることはできるという希望を持っていたい」

10年間治療を続け、45歳で治療を止めることを決意したS・Aさんご夫婦。今は地域の子どもたちとの関わりを持ちながら、夫婦の時間を過ごしています。その決断に至るまでについて、お聞きしました。

―― 不妊治療を始めるきっかけを教えてください。

結婚した当初から、子どもは2人ぐらい欲しいなと思っていましたが、なかなか妊娠しませんでした。生理は順調ですし、基礎体温もきれいに2層に分かれていたので、私に原因があるとは思えなかったのですが、念のために婦人科に行くことにしたんです。
結婚して1年後のことでした。
夫婦ともにひと通りの検査をしましたが、特に異常もみつからず、排卵のタイミングをしばらく診てもらいました。月に1、2回通院するくらいだったので、不妊治療をしている自覚はありませんでした。
その後も、なかなか妊娠しなかったので、体外受精もできる専門のクリニックへ転院しました。でも、仕事との両立がとても難しくて。ある程度分かっていたものの、精神的に限界を感じ通院を断念、半年後、別のクリニックで治療を再開しました。

―― 病院での治療はいかがでしたか。

総合病院の婦人科、不妊専門クリニック、大学病院などに通いましたが、十分な説明がない時、納得できない時、先がみえない時はいずれも不安でした。治療に満足できるかどうかは、安心して治療を受けることができるかどうかだと思います。技術がどうこうというよりも、病院のスタッフから何気なくかけられた言葉に傷ついたり、励まされたりしたように思います。
結局、タイミングと人工授精を2年、体外受精を4年半。途中で休みながらですが約10年間治療をしていました。そして今年の春、夫婦2人で生きる道を選びました。


―― 治療を止めることは、どのように決められたのでしょうか。

最後に採卵したのは、私が41歳の時だったのですが、長期に渡る不妊治療で精神的にも肉体的にも疲れていたため、すぐに受精卵を戻すことはしませんでした。
でも通院再開予定と東日本大震災とが重なってしまい、なかなか通院を再開する気持ちになれず、しばらく延期していたんです。
そして今年の春、私は45歳になり、これから妊娠・出産するには体力的にも難しいとの判断から、夫婦で相談して、受精卵を破棄することにしました。私に持病があり、妊娠出産は一般の人よりもハイリスクであったことも、その理由の一つです。

―― 治療を止めることを決める際、ご主人とはどんな話し合いをされたのでしょうか。

家族を持つことについては、日頃からいろいろと話し合っていました。
受精卵を破棄したことについては、生まれる可能性のあった命を、私たち夫婦の意思で奪ってしまって、果たしてこれで良かったのか。今でも悩むことはあります。

―― 不妊治療のことは周囲の方には伝えましたか。

治療を始めた頃は、誰にも話しませんでした。
体外受精を5回ほど受けて、年齢も40代になろうとしていた頃に一人で抱えきれず、不妊治療経験のある学生時代からの友人に、初めて打ち明けました。今はオープンにしているので、不妊治療をしている(していた)ことを多くの人は知っています。
治療をしていることをオープンにしてからは、周囲の人からいろいろと言われました。
「まだ、大丈夫よ」「まだまだあきらめないでね」「自然にまかせれば?」「まだ治療するの?」「もう、とっくにあきらめていると思った」……
励まされても、慰められてもどちらもつらい気持ちになりました。

―― 今、不妊治療をふりかえってみて、どんなことを思われますか。

不妊治療の経験は、私の人生にとても大きな影響がありました。社会的な役割として、私のできること、やるべきことを考えるきっかけになりました。
みんな、口には出さないけれど、それぞれ悩みを抱えながら生きていること、生きづらさを抱えていることを知ることもできました。
あるべき姿、こうあるべきという考えが自分を苦しめていること(私にとっては、結婚をして、子どもを産み育てて1人前という考え)、いろいろな家族、いろいろな生き方、それぞれの役割があるということに気づきました。


―― 養子について、考えられたことはありますか。

今だからいえることですが、もしも不妊治療を始める前に養子のことを真剣に考える時間があったならば、こんなにも長く不妊治療に時間を費やすことはなかったのではないかと思うことはあります。
でも今は、産むことはなくても、もしかしたら将来、子どもを育てることはあるかもしれないという気持ちは持っていこうと思っています。積極的に養子を迎えるということではなく、養育するかどうかにこだわらず、地域の子どもの成長を見守ることも大切にしていきたいんです。たとえば今、私は小学校で絵本の読み聞かせや、保育のお手伝いなどもしています。
夫は、休日に小学生のアートスクールの手伝いをしていて、とても楽しそうです。
この先、どんな人生になるのかは誰にも分かりませんが、不妊治療をこんなにも長期に渡って受けても、子どもを産むことができなかったという絶望を抱えて生きるよりも、何歳になっても育てることはできるという希望を持っていたいと思います。

―― これから治療を始めようとしている方に、メッセージがあればお願いします。

妊娠・出産はゴールではなく、新たな家族のスタートの1つです。今、目の前にある幸せを手放すことのないようにしてほしいです。
不妊治療をはじめる前に、しっかりと夫婦で向き合って、どんな家族をつくりたいか話し合うのも楽しいと思います。治療を始めたばかりの頃、「妊娠することばかりに気をとられていると、夫婦仲が悪くなるから気をつけなさい」と、ドクターから言われました。当時は、ピンとこなかったのですが、私たち夫婦にとって宝となった言葉です。



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