もくじ
妊娠37週0日から41週6日で出産した場合、平均2500〜4000g未満で生まれてきます。
生後数日間は一時的に体重が減少しますが、その後はどんどん増え、生後1ヶ月にはおよそ1000gも体重が増加します。
しかし、体重の増えが思わしくなかったり、母乳やミルクを飲む量が少ないと心配になってしまいますよね。
これから、新生児期の体重の推移について詳しく解説し、さらに体重が増えない原因などについても紹介します。
新生児の体重は?

体重が2500から4000g未満で生まれた新生児を、正常出生体重児と言います。
正常出生体重児の場合、呼吸や消化機能などが成熟した状態で生まれてきます。
では、小さめで生まれた赤ちゃんはどうなのでしょうか?
超低出生体重児とは
超低出生体重児は、1000g未満で生まれた赤ちゃんのことです。
お母さんのお腹の中で過ごす時間が短いため、呼吸機能や消化機能が未熟な状態で生まれてきます。
そのため、さまざまな合併症を起こす可能性が高く、新生児治療室(NICU)で様子を見る必要があります。
極低出生体重児とは
極低出生体重児は、1000から1500g未満で生まれた赤ちゃんのことです。
超低出生体重児に比べると、体重は少し多めですが成長はまだ未熟な状態です。
超低出生体重児と同様、体の機能は未熟で免疫力も十分ではないため、NICUで管理する必要があります。
新生児の体重増加

正常出生体重児の場合、生後1ヶ月で体重が1000gも増えることは前述しましたね。
では、新生児期の体重増加の特徴と体重測定についてみていきましょう。
特徴
生まれて数日間は、母乳やミルクで補う量をウンチやおしっこで排泄される量が上回るため、自然と体重は減少します。
これを生理的体重減少といい、平均で体重の3〜10%減少すると言われています。
その後は1日当たり25〜30gずつ体重が増加し、生後2週間ほどで生まれた時と同じくらいにまで戻ります。
体重の測り方
g単位で測ることができるベビースケールは、新生児の体重の変化を見るために最適なものです。
しかし、これは高価であることに加え、測定可能な体重に限りがあるため、必ずしも必要とはいえません。
また体重の変動は、日によって違いがあるうえ、個人差もあります。
機嫌が良く母乳やミルクを飲んで眠れているのであれば、毎日体重を測る必要はないのです。
どうしても体重を測りたいという場合は、住んでいる地域の保健センターなどに相談するとよいでしょう。
ベビースケールの使い方
ベビースケールは、体重をg単位で測ることができるため、オムツ1枚でも誤差が生じてしまいます。
それを防ぐために「入浴前に裸の状態で測る」など、測定する時の条件を決めておくとよいでしょう。
母乳の場合は、どのくらい飲めているのか正確に把握できないため、体重が増えているのかどうか気になることもあるでしょう。
赤ちゃんの機嫌がよければ心配はいりませんが、ベビースケールを使用すれば、授乳前後の体重を比べることによって飲んだ母乳の量も知ることができますよ。
パーセンタイル値とは?
パーセンタイル値は、子どもの栄養状態と発育を評価する指標の一つで、大きさ順に小さい方から並べた時にどの位置にあるかを表す言葉です。
全体を100として、中央値を50と考えます。
例えば40パーセンタイルの場合、小さい方から数えて40番目であるということを示しています。
この数値は、厚生労働省が10年ごとに行なっている「乳幼児身体発育調査結果」に基づいて考えられています。
現在使用されているものは、2010年に行われた調査の結果が反映されているものです。
パーセンタイル値の見方
母子手帳に、性別ごとの身体発育曲線のグラフが載っています。
縦軸には身長と体重、横軸に月齢(年齢)が設定されています。
下記の表に記されている数値をもとに、パーセンタイル曲線が描かれています。
グラフには、3から97までの7つのパーセンタイル曲線があり、個人差はありますが、ほとんどの場合はいずれかの曲線に沿って成長します。
赤ちゃんの発育状況を知るために、難しい計算は必要ありません。
赤ちゃんの体重と月齢(年齢)が交わるところに印をつけて線で結び、曲線を描いてみましょう。
これによって、同じ時期の赤ちゃんと比べて小さめなのか標準なのかを知ることができます。
男児の体重の身体発育値
男児のパーセンタイル値は以下のようになっています。
3 | 10 | 25 | 50 | 75 | 90 | 97 | |
出生時 | 2.10 | 2.45 | 2.72 | 3.00 | 3.27 | 3.50 | 3.76 |
1日 | 2.06 | 2.36 | 2.62 | 2.89 | 3.14 | 3.38 | 3.63 |
2日 | 2.01 | 2.33 | 2.57 | 2.84 | 3.09 | 3.33 | 3.56 |
3日 | 2.00 | 2.36 | 2.58 | 2.84 | 3.10 | 3.35 | 3.59 |
4日 | 2.03 | 2.36 | 2.60 | 2.88 | 3.14 | 3.38 | 3.62 |
5日 | 2.04 | 2.35 | 2.62 | 2.90 | 3.17 | 3.42 | 3.65 |
女児の体重の身体発育値
女児のパーセンタイル値は以下のようになっています。
3 | 10 | 25 | 50 | 75 | 90 | 97 | |
出生時 | 2.13 | 2.41 | 2.66 | 2.94 | 3.18 | 3.41 | 3.67 |
1日 | 2.07 | 2.34 | 2.56 | 2.81 | 3.06 | 3.28 | 3.53 |
2日 | 2.04 | 2.29 | 2.51 | 2.76 | 2.99 | 3.22 | 3.46 |
3日 | 2.03 | 2.28 | 2.51 | 2.76 | 3.00 | 3.23 | 3.47 |
4日 | 2.05 | 2.31 | 2.54 | 2.79 | 3.04 | 3.26 | 3.50 |
5日 | 2.03 | 2.31 | 2.54 | 2.81 | 3.06 | 3.28 | 3.54 |
注意点
身体発育曲線のグラフに、赤ちゃんの数値を記入した時に、3パーセンタイル未満と97パーセンタイルを超える場合は注意が必要です。
これらに当てはまる場合、発育になんらかの問題が生じている可能性があるため、精密検査が必要になることもあります。
また、短期間でパーセンタイル曲線を下方向に2つ以上低下する場合にも、詳しい診察が必要になります。
増えない理由
赤ちゃんの体重が増えないと、具合が悪いのか、病気ではないかなど心配になってしまいますよね?
体重が増えない主な理由は、生理的体重減少と母乳不足が考えられます。
生理的体重減少
生後数日間は、ウンチやおしっことして排出される量が母乳やミルクの量を上回るために体重が減少します。
これは、母乳でもミルクでも同様に起こると言われています。
一般的に、生まれた時の体重の3〜10%減少し、生後2週間ほど経つと生まれた時の体重に戻ります。
生理的体重減少率は、減少した体重の値を生まれた時の体重で割った数字に、100をかけたもので求めることができます。
体重の減少が気になる時は、計算してみるとよいでしょう。
中には、生理的体重減少が10%を越える場合があります。
体重の減少が著しい場合や、体重の戻りが悪い時は受診しましょう。
母乳が足りていない
生まれたばかりの赤ちゃんは、おっぱいを吸うことに慣れていません。
そのため、母乳をうまく吸うことができず、十分に栄養を補うことができない場合があります。
また、出産後数日は母乳が十分に分泌されないことや、赤ちゃんにとって吸いにくい乳首であることも原因となります。
母乳育児にママと赤ちゃんが慣れるに従って、上手に吸えるようになり、母乳の分泌量も増えていきます。
体重の増えが十分ではなくても、機嫌が良く、うんちやおしっこが出ているのであれば様子をみてもよいでしょう。
お医者さんに相談したほうがよい症状
なかなか体重が増えない場合、病気が隠れていることもあります。
治療が必要となる病気3つを紹介します。
当てはまる症状がある場合は、なるべく早めに受診しましょう。
肥厚性幽門狭窄症
母乳やミルクを飲んだ後に、吐いてしまうことがありますよね?
吐く量が少量の場合は心配ないのですが、噴水のように大量に吐く場合は注意が必要です。
胃の出口にある幽門という筋肉が厚く(肥厚)なる病気を、肥厚性幽門狭窄症と言います。
生後2〜3週間目頃から見られる病気で、比較的男の子に多く見られる傾向があります。
この病気は、幽門が厚くなり胃の出口が狭くなるため、母乳やミルクが十二指腸に流れず胃に溜まり、吐いてしまう病気です。
十分な栄養をとることができないため、体重が増えなくなってしまいます。
肥厚した幽門を広げる手術をすることによって、母乳やミルクを飲むことができるようになります。
クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
甲状腺は、のどにある蝶のような形をした器官で、ホルモンを分泌しています。
生まれつき甲状腺の機能が低下、もしくは機能していない状態を、先天性甲状腺機能低下症と言います。
現在日本で行われている検査は精度が高く、軽度の甲状腺機能低下症も見つけられるため、赤ちゃんの2000人に1人が治療を受けていると考えられています。
クレチン症の特徴として、まぶたが腫れぼったい、泣き声が小さい、母乳やミルクを飲む量が少ないなどがあります。
母乳やミルクを飲む量が少ないため、体重の増加が思わしくないこともあります。
この病気は、治療開始が遅れると知能障害を起こすこともあるため、早期発見、早期治療が重要となります。
ヒルシュプルング病
ヒルシュプルング病は、腸の動きを調節している神経節細胞が欠けているために起こる病気です。
腸の動きがうまくいかないため、飲んだ母乳やミルクが腸の中を移動することができません。
主な症状は、便秘、嘔吐、お腹が膨らむなどですが、進行すると栄養を十分に吸収できないため体重が減少することもあります。
この病気の治療法は、手術によって神経節細胞が欠けている部分の腸を切り取る方法になります。
体重を増やす方法
生後1ヶ月で1000gも体重が増加します。
1日平均25〜30gずつ増えていくことになりますね。
順調に体重が増えるために、赤ちゃんの様子を観察するとともに哺乳の工夫が必要となります。
母乳が足りていますか?
生理的体重減少によって減った体重は、生後2週間ほどで元の体重に戻ります。
母乳やミルクを上手に飲めるようになると、体重は徐々に増えていきます。
さらに、母乳の分泌量も徐々に増えていくため、多くの場合は心配はいりません。
しかし、中には母乳の分泌量が少ないママもいます。
乳房マッサージを行うと、乳房周りの血流がよくなり母乳の分泌量が増加します。
また、きついブラジャーは血流を妨げる原因となるので控えましょう。
さまざま工夫しても母乳が足りないと感じる場合は、母乳だけにこだわらず足りない分はミルクで補ってもよいと考えましょう。
上手に飲めていますか?
生まれて間もない新生児の頃は、まだまだ上手におっぱいを飲むことができないこともあります。
おっぱいを吸う時の、赤ちゃんの口を確認してみましょう。
アヒルの口の形になり、乳輪の部分までしっかりくわえられていれば成功です。
乳首の形や大きさによっては、口に含みにくい場合もあるので工夫してみましょう。
また、同じ姿勢で授乳していると、飲み残しがある乳腺が出てしまいます。
すると、母乳の分泌量が少なくなるばかりでなく、乳腺炎を起こす原因にもなります。
横抱きや縦抱きなど、抱っこの方法を変えて授乳するとよいでしょう。
授乳の回数を増やしましょう
授乳の間隔は、赤ちゃんによって異なります。
一度にたくさん飲む赤ちゃんや、少量ずつ何度も飲むということもあるでしょう。
赤ちゃんに乳首を吸われる刺激によって、プロラクチンというホルモンが分泌され母乳が作られます。
授乳回数を増やすことによって、作られる母乳の量が増加します。
授乳間隔にこだわらずに、赤ちゃんが欲しがるタイミングで満足するまで飲ませてあげましょう。
母乳の分泌を増やす
母乳はママが食べた栄養分や水分から作られています。
母乳を増やすために、バランスの良い食事と水分補給を心がけましょう。
しかし、ストレスや疲れがたまると、母乳の分泌が悪くなってしまうこともあります。
育児の合間に休息をとるようにしましょう。
低体重児の増加
低体重で生まれると、呼吸や消化機能が未熟であるため、さまざまな病気のリスクが高まります。
また、新生児治療室での管理が必要となることも多く、ママと赤ちゃんが離れて過ごす時間が増えてしまいます。
なぜ、低体重児の出生が増えているのでしょう?
その原因についてみていきましょう。
低体重児の増加の原因
出生数は年々減少していますが、低体重児の出生数は増加傾向です。
低体重児になる原因は、予定日より早く生まれる早産や子宮内で赤ちゃんが十分育たない子宮内胎児発育不全などです。
早産によるもの
双子などの多胎妊娠や糖尿病、妊娠高血圧症候群は早産のリスクを高めます。
これは、晩婚化が進み、高齢での妊娠や不妊治療による影響と考えられています。
不妊治療によって多胎妊娠が増加していること、さらに高齢での妊娠によって糖尿病や妊娠高血圧症候群を発症するリスクが高まることなどが要因と言えます。
子宮内胎児発育不全によるもの
子宮内胎児発育不全は、妊娠週数に対して赤ちゃんの成長が遅いことです。
原因となるのは、母体、胎盤、赤ちゃんの3つです。
母体側の原因の多くは、妊娠高血圧症候群や多胎妊娠、喫煙などによるものです。
胎盤はへその緒を通して、赤ちゃんに酸素や栄養を供給しているものです。
胎盤に障害があると、働きが妨げられ赤ちゃんの発育に影響が出てしまいます。
赤ちゃん側の原因の多くは、染色体の異常や先天的に体になんらかの障害があることです。
低体重児のリスク
低体重で生まれるということは、体が小さいというだけではなく、合併症や障害のリスクが高くなります。
低体重児の中でも2000g未満で生まれた場合、さらに合併症が起こりやすく、障害が残ることもあります。
これは身体機能が未熟な状態で生まれるためで、動脈管開存症や新生児仮死などの重大な合併症や、未熟児網膜症や身体の麻痺などの後遺症が生じる可能性があります。
また、精神発達の遅れや知的障害が残る場合もあります。
まとめ
生まれて数日間は、生理的体重減少によって自然と体重が減少します。
生後2週間程度で体重は元に戻り、その後は平均で1日25〜30gずつ増えていきます。
体重の増加が思わしくないと心配になりますが、赤ちゃんが機嫌よく、うんちやおしっこが出ていれば様子をみてもよいでしょう。
しかし、中にはクレチン症やヒルシュプルング病など、治療を必要とする病気になることもあります。
日頃から赤ちゃんの様子を観察し、いつもと様子が違う場合は受診するようにしましょう。