もくじ
「母子手帳」を初めて手にした時、妊娠したことを実感する妊婦さんも多いですよね。
正式には、「母子健康手帳」といいますが、日本で初めて作られたものだと知っていましたか?
日本で使い始められ、60年は経過している母子手帳。内容は数年ごとに制度の変化や社会情勢にあわせて改正されています。最近では2012年に改正されました。
母子手帳は、妊娠期から学童期以降まで長く、子どもの記録が行えるものです。活用できれば大変便利で、心強く、将来子どもへの財産になっていきます。
今回は、母子手帳の中身について説明し、実際の活用方法をお伝えします。
母子手帳とは
母子手帳には、妊娠期から乳幼児期までの健診や成長の記録、予防接種の履歴を行うものです。現在は小学生以降の健康の記録もできるようになってきました。
また、記録としてだけでなく、子育てについての必要な情報や、さまざまなサポート体制・相談窓口が書かれており、心強い味方になってくれます。
そして保護者が、子どもの節目などにコメントを書く欄が設けてあり、子育て期の記録ができるようになっています。
母子手帳の役割
母子手帳の重要な役割は、妊娠期からの健康に関する情報が1つの手帳で管理されていることです。
とくに、妊娠から出産を経て、乳幼児期は健康であっても状態の変化が大きいものです。
妊娠中は産科医、出産後は小児科医と成長に合わせて、かかりつけ医が変わっていきます。異なる医療機関や専門家が診ても一貫した医療が受けられるようになっているのです。
母子手帳のメリット
母子手帳により、切れ目のないケアが受けられることはわかりましたね。
もう1点、母子手帳に合わせて、各自治体での違いはありますがもらえるものがあります。
- 妊婦健診の受診券、補助券
- マタニティーマーク
- 各自治体で受けられる、子育て支援サービスの情報
- 母子手帳の副読本
母子手帳は、単に受け取るだけのものではありません。これからの子育て期において、いろいろな情報や支援を受けることができるよう、体制が整えられています。
母子手帳をもらう時期は?

時期について
母子手帳をもらう時期は、個人差はありますが、妊娠週数6~11週頃になります。
母子手帳をもらうためには、妊娠届出書が必要です。
- 妊娠週数
- 出産予定日
- 医療機関名
- 医師の名前
これらの記入が必要になるため、かかりつけ医から妊娠届出書とともに「もらってきてください」と指示が出されることが多いです。
不安な場合は、かかりつけ医に手順や時期などを確認しておくと良いでしょう。
どこでもらえるの?
市町村区の役所でもらえます。役所の近くに保健福祉センターが併設されている場合は、そちらになる自治体もあります。
自分の住んでいる役所で確認しましょう。
また、母子手帳交付の日にち・時間を設定している役所もあります。
保健師や看護師から、交付とともにいろいろな説明やアンケートを実施しており、すでにこれからの支援を受けられるよう進められていきます。
また市町村区主催の母親学級・両親学級や離乳食講習会など、行政のサービスが受けられる情報も教えてくれるでしょう。
個人ではなく、何人か集まってもらうことになるので、同じ時期に出産予定のママたちとの顔合わせのような機会にもなります。一緒に子育てをしていく同志のようなものなので、ママ友作りの第一歩になるかもしれませんね。
必要なもの
- 妊娠届出書
- その他、書類を入れる袋やかばんを持参すると良いでしょう。
妊婦本人が交付に行けない場合
つわりや体調不良の場合は、代理人でも交付は受けられます。
必要なものは、各役所へ、事前にHPや窓口で確認しておきましょう。以下は参考にしてください。
- 身分証明書
- 印鑑
- 妊婦本人のマイナンバー
- 委任状
母子手帳の扱い方について

妊娠中は、健診や歯科治療、母親学級の参加など、その都度医師や看護師に記入してもらうため持参しましょう。
また外出する時は、常に持ち歩くことをおすすめします。
急なトラブルや陣痛が起きても、必要な情報がわかるため、的確な処置が受けられます。
持ち歩きに便利な道具紹介
母子手帳の表紙のデザインは、各自治体で違いがあり、残念ながら自分で選ぶことはできません。
自分の好みでない場合は、表紙のテンプレートがインターネット上にあるので探してみても楽しいでしょう。
オリジナルのデザインやオーダーメイドで作る人もいます。
その他、表紙が気に入らなくても母子手帳ケースはたくさん市販されています。機能性にこだわっているものや、見た目がかわいくおしゃれなものまで、たくさんあります。
fafa(フェフェ)
カラフルな花柄や電車の柄など、ポップなデザインが多くあります。
母子手帳のS、M、Lサイズに合わせて、3サイズの展開があり、形もジャバラタイプ、見開きタイプなど豊富に揃っています。
ママタレントさんの愛用者も多いようですね。
ファミリア
ファミリアの定番モチーフ、くまのデザインで数種類、展開があります。
こちらも母子手帳のサイズに合わせて3サイズあります。
上品でやさしい気持ちになれる、母子手帳ケースも素敵ですね。
無印良品
無印良品ならでは、シンプルで機能性が高く、パパにも人気のようです。
ジャバラ式で、3人分の母子手帳が入れられると好評です。
サイズはSサイズ用の小タイプと、M、Lサイズに対応した大タイプがあります。
母子手帳の内容と記入の仕方
母子手帳の内容は、大きく2つに分かれています。
- 全国的に共通している部分
- 市町村で任意で書かれる部分
以下、実際の記録が見られます。
全国的に共通している内容
妊娠・出産編
妊婦自身が記入するところ
- 子の保護者欄 : 名前・年齢・職業・住所・電話番号
- 妊婦の健康状態 : 身長・体重・既往・感染症・喫煙飲酒の有無・夫の健康状態・いままでの妊娠など
- 妊婦の職業と環境 : 職業・内容・産前休業・産後休業・育児休業・住居の種類・騒音・日当たり・同居人など
- 妊婦自身の記録 : 妊娠週数別に自由に書ける
手帳を受け取ったら、自分で記入してくださいと書かれてある場所は、すぐに書き込みましょう。
随所に必要な情報が書かれています。一度目を通しておくと良いでしょう。
出生届出済証明
出産後、まず初めに行う手続きが、出生届の提出です。
出生届けを提出した市町村の窓口で署名・押し印をしてもらいます。
職場に出生届出済証明書のコピーの提出するが必要な場合があります。記載に間違いがないか確認しましょう。
病院で記入してもらうところ
- 妊娠中の経過 : 妊婦健診の結果を記入してもらうところ (体重・血圧・尿糖・むくみなど)
- 検査の記録 : 風疹抗体、HIV抗体など血液検査の結果など
- 母親学級受講記録 : 自治体開催、出産する病院で開催しているものの参加記録
- 妊娠中と産後の歯の状態 : 多くの自治体は妊婦健診の受診券とともに歯科受診券も交付している
- 出産の状態 : 妊娠期間、生まれた日時、分娩方法、出血量、赤ちゃんの性別・身長・体重・胸囲・頭囲
- 出産後の母体の経過 : 子宮の戻り、悪露(おろ)、乳房の状態、血圧、尿糖、尿たんぱく、体重
- 生後1週間以内の経過 : 日齢、体重、哺乳力、黄疸の有無
- 退院時の記録 : 体重、栄養法(母乳や人工乳、混合など)
乳児期編
乳児期は、成長を4段階に分けて健診の結果などを記入するようになっています。
- 1ヶ月ごろ
- 3~4ヶ月ごろ
- 6~7ヶ月ごろ
- 9~10ヶ月ごろ
基本的に見開きで使用します。
左側のページは、保護者の記録です。「はい」「いいえ」で発達に関する質問を答えます。
ページ下は空欄になっており、子どもの成長や心配ごと、感想など自由に記入できます。
右側のページは、健診時に医療機関が記録します。
便色の記入について
生後4ヶ月くらいまでは、うんちの色に注意が必要です。胆道閉鎖症という病気の可能性を、保護者が気付けるよう1~7番でうんちの色をカードで示しています。
オムツ交換時に、明るいところでカードの色と見比べ、うんちの色に注意できるようになっています。
幼児期編
幼児期は1歳~6歳までを7段階に分けて記録できます。
- 1歳
- 1歳6ヶ月ごろ
- 2歳
- 3歳
- 4歳
- 5歳
- 6歳
乳児期同様、見開きで記入できる形式です。
乳幼児 身体発育曲線
横軸に月齢や年齢、縦軸に身長・体重の数値が書かれた曲線グラフになっています。
厚生労働省が10年ごとに乳幼児の身体の発育を調べ、作成しているものです。
グラフ内の色が付いた帯びの中に、各月・年齢の94%の子どもの値が入ります。
健診時に医療機関が記入する場合もありますが、保護者も随時記入します。帯内に入っていないと不安になるかもしれませんが、帯から外れていても発育曲線のカーブに沿って、身長・体重が増えていれば問題はないでしょう。
発育曲線は、成長の目安です。どのあたりに自分の子どもが位置しているか確認し、どんな曲線を描いているかを見るようにしましょう。
予防接種の記録
生後2ヶ月から予防接種が始まります。
予防接種を受けることで感染症の予防ができ、もし病気になっても重症化を防ぐ効果が期待できます。
予防接種を受ける時は、問診表と一緒に母子手帳を提出します。いつ、どこで、何のワクチンを打ったか、医療機関が記入します。
市町村で任意で書かれる内容
任意で書かれている内容は、出産や育児に関する読み物が多くなっています。
今回は、「親子健康手帳」に載っている内容を中心にお伝えします。
「親子健康手帳」は、共働き世帯の増加など、変化する現代の子育て環境にマッチした母子手帳を作ろうという発想から生まれた、新しい母子手帳です。
子育てはママとパパが主役であるという考えから、パパも手に取りやすいよう「親子健康手帳」という名前になりました。
2018年の時点で採用自治体は197にもなり、毎年増え続けています。
妊娠・出産編
赤ちゃんの成長と母体の変化
妊娠期の10ヶ月が表になっており、ひと目で見やすい工夫がされています。
- 赤ちゃんの成長
- お母さんの体の変化 健康管理
- お父さんの心得
妊娠・出産期の必須知識
- 母と子の健康チェックについて
- 産むためのお金のサポート
- 働きながらのサポート制度
- 安心して仕事をお休みするために
- シートベルトについて
- 妊娠中の食事について
- 歯の健康について
- 妊娠中のマイナートラブル 食事で解決
- 妊娠中の運動
- 妊娠中の体重増加
- 出産のサインについて
- パパになる準備について
今はいろいろな情報が多い中、母子手帳に必要な知識や情報が載っているのはありがたいですね。上手に活用しましょう。
乳児期編
乳児期の成長と育児のポイント
乳児期の12ヶ月を、「心と体の成長」「育児のポイント」でまとめ、表になっています。
乳児期の食事のポイント
「食事の段階」「食事のポイント」が表で示されています。
乳児期の必須知識
- ”誕生したら”の手続き
- ”育てる”のサポート制度
- 母乳育児について
- 乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防
- 産褥期ケアについて
- 産後うつのサイン
- ゆさぶり過ぎ注意
- 乳児期のパパ力
- うんちチェック
- 誤飲について
- ”泣く”コミュニケーション
- はみがきについて
- 赤ちゃんの肌あれ対策
- 生活リズムの見直し
乳児期の記録
フリースペースになっています。子どもの日々の出来事やイベント、気になったこと、発見したことなど自由に書き込めます。
幼児期編
幼児期の成長と育児のポイント
1歳~6歳までの「心と体の成長」「育児のポイント」が表になっています。
幼児期の必須知識
- おっぱいの卒業と食事
- 生活習慣のチェック
- はみがき習慣について
- オムツはずれについて
- 上手なしかり方
- お友だちづくりのススメ
- テレビとのつきあい方
- 発達障害について
幼児期の記録
乳児期と同様、保護者が書き込めるフリースペースになっています。
小学生以降編
小学生以降の必須知識
- 学校生活の精神的負担
- 自己肯定感について
- 生活習慣病について
- 外遊びでカラダづくり
- 思春期のココロ
- 性のただしい理解
- たばこ・アルコール・薬物について
- ダイエットのマイナス作用
保護者が書き込めるフリースペース
- 小学生以降の発育曲線
- 小学生以降の健康の記録
- 中学生以降の健康の記録
事故防止
- 乳幼児の事故防止12か条
- 飲み込んだ!つまった!時の対処
母子手帳の注意点
引越し
母子手帳を受け取った後に、転居する場合、新たな手続きは必要ありません。
基本的な母子手帳の主要ページは全国共通であり、表紙など違いはあっても問題はありません。
ただ、母子手帳と一緒に交付される、妊婦健診の受診券や補助券は、自治体独自に発行しているため使用できなくなることがあります。転居先の自治体で確認しましょう。
紛失した場合
紛失してしまった場合は、役所で再交付をしてもらえます。再交付の申請書を提出します。必要なものは各自治体で違うので確認してから出向いたほうが良いでしょう。
ただ今まで記入されていた記録は消えてしまいます。記録の再記入は、かかりつけ医や保健所で行ってもらえる場合があります。有料となる場合もあるので、一度相談し検討しましょう。
また、最近はアプリなど電子母子手帳を導入する自治体もあるようです。従来の紙の母子手帳と併用し、電子版でも記録しておくと、災害時などでも安心ですね。
妊婦健診の補助券は再交付できないとする自治体が多いようです。盗難などの自己都合による紛失でなければ、再交付してもらえる場合もあります。各自治体で確認しましょう。
流産・死産の場合
母子手帳を受け取った後に、残念ながら妊娠の継続ができなかった場合、母子手帳の返却などは必要ありません。
妊娠12週が過ぎて、流産・死産してしまった場合は、役所に死産届の提出が必要になります。
母子手帳は、人によりそのまま保管される方や、水子供養の時に持参して処分してもらう方もいるようです。
最近の母子手帳

母子手帳以外にもネーミングを変え、母親以外の保護者の育児を応援する手帳が出ています。ご紹介しましょう。
父子手帳
父子手帳は、これからパパになる人の心得や、妊娠・出産・子育ての情報を伝える目的で書かれています。
各自治体で制作されており、無料配布している県もあります。
配布されていない場合は、購入もできます。以下を参照ください。
祖父母手帳
祖父母手帳は、孫育てに参加してくれる、祖父母に役立つ情報が紹介されています。
各自治体が作成しています。両親がURLを祖父母へ送り、読んでもらうのも良いですね。
以下サイトをご紹介します。
「20年をつづる母子健康手帳」
一般的な母子手帳は乳幼児期までの記録が主ですが、この母子手帳は名の通り、20才までの成長記録が1才ごとに記入できます。
2018年度に改訂版が出ました。トイザらスの店舗とオンラインストアから販売されています。
外国語母子手帳
妊婦本人が外国籍で、日本語がわからない場合、外国語版の母子手帳を交付している自治体があります。
必要な場合は、各自治体へ確認しましょう。
対応言語9カ国
- 英語
- ハングル
- 中国語
- タイ語
- タガログ語
- ポルトガル語
- インドネシア語
- スペイン語
- ベトナム語
購入もできます。以下参照ください。
まとめ
出産後は赤ちゃんのお世話でいっぱいになり、なかなか母子手帳をゆっくり開く時間は持てないかもしれません。
母子手帳を受け取ったら、読み物のページや記入が必要な箇所などをチェックし、パートナーと情報を共有できる時間が持てるといいですね。
母子手帳が非行に走った子どもの生き方を変えたという実話があるようです。
親と子の絆を作る、母子手帳をぜひ作っていきたいですね。