皆さん、妊娠する前には一度は湿布をはった経験がありますよね。
妊娠中は、体にも負担がかかり腰などを痛めることも多いでしょう。
足やふくらはぎがつってしまって痛いこともよくあります。
上の子を抱っこし過ぎて肩や手首を痛めてしまうことも。
妊娠中だけど、湿布を張りたい場合どうしたら良いでしょうか。
看護師で3人の小さい子の母でもある筆者が解説します。
湿布ってなんだろう?

湿布といっても様々な種類がありますよね。
湿布とはどのようなもののことでしょうか。
また、塗り薬とは違うのでしょうか。
湿布はどのようなもの?
湿布とは名前の通り湿った布のことです。
湿った布に、薬液などの水分を浸し、患部に当てることにより効果を期待します。
湿布には種類があるの?
大きく分けて温湿布と冷湿布があります。
温湿布とは、患部を温め、主に血行を良くし症状の改善を期待するものが主流。
冷湿布とは、含まれている水分などで、主に患部を冷やしながら炎症や痛みを抑えることを目的としています。
塗り薬との違いは?
塗り薬は、湿布に含まれる薬剤と違い、浸透力があるので、湿布に比べると即効性があります。
その分、汗や衣類の摩擦などにより薬剤が落ちてしまい、湿布に比べ持続性は落ちます。
また、湿布だと目立つ部分は避けたい…関節など動かす場合不便…という場合は便利でしょう。
妊婦さんは湿布を貼っていいの?
妊娠中の方は、飲める薬も限られており、薬に対してとても気を使いますよね。
内服薬ではなくとも、実際に体に影響を及ぼす湿布は、妊娠中使用できるのでしょうか。
妊娠中になぜ、薬がNGであることが多いのか
前述の通り、種類にもよりますが、妊娠中は薬が飲めないことが多いですよね。
妊娠中は、母親の体内で赤ちゃんの体が作られています。
薬の成分によっては、赤ちゃんの器官形成や、成長・発達に影響を与えてしまうことがあるからです。
もちろん、湿布の場合は、皮膚から湿布の成分(薬液)が吸収されるため、注意が必要です。
妊娠中は湿布を貼っても良いの?
貼って良いのかと聞かれれば、湿布の種類によります。
そして、医師と相談してからが良いでしょう。
副作用のない薬はないとも言われています。
薬を使用する場合は、副作用より効果の方が上回る場合ですので、湿布の場合も安易に使用をするのはやめましょう。
湿布が妊娠中にいけない理由は?
全ての湿布が妊娠中にダメではないですが、湿布の中には妊娠中は避けるように記載されているものもありますよね。
主な理由は、薬の成分と妊娠週数によっては、動脈管収縮、羊水過少などの異常がおきるからです。
滅多にありませんが、長期に使用してしまった場合など死亡例も報告されているので要注意です。
間違って貼ってしまったら?
湿布の使用により死亡例もあると聞くと、心配になってしまいますよね。
湿布は皮膚から薬剤の成分が吸収されるので、内服薬に比べれば影響も少なく、長期にわたって使用しなければ大丈夫という医師が多いです。
気持ちの問題ですが、貼ってすぐなら洗ってみるなど、気付いた時点でやめましょう。
週数にもよりますし、ほとんどの場合は微量で大丈夫なことが多いので、胎動など赤ちゃんの様子に注意しながら病院で相談してみれば安心ですね。
妊娠中は避けたい湿布の成分

妊娠中に湿布を使用す場合、実際に避けた方が良い成分は何でしょうか。
消炎鎮痛剤の多くは、胎児の動脈管という生命に関わる大切な血管に悪影響を与える恐れがあるとされています。
週数にもよりますので、全てではないですが、代表的なものを解説します。
「モーラステープ」などに含まれる成分「ケトプロフェン」
非ステロイド系抗炎症薬で、鎮痛解熱作用があり、テープ剤に多く使用されています。
様々な副作用がありますが、主には妊娠後期に使用すると、胎児の動脈管収縮の可能性があります。
子宮内で動脈管が収縮してしまうと、胎児の命に関わります。
特にリスクの高い妊娠後期の使用は禁忌とされていますが、妊娠初期なら良いというわけではなく、使用する際は医師に相談するなどしましょう。
「ボルタレン」などに含まれる成分「ジクロフェナク」
同じく非ステロイド系の消炎鎮痛剤です。
ケトプロフェンと同様に、胎児の動脈管収縮や羊水異常をきたす恐れがあります。
特に、分娩が近い時期に使用した場合、動脈管開存や新生児肺高血圧症など胎児循環維持や、尿を作る機能に影響を与え乏尿などのリスクがあります。
湿布の他に内服薬としても使用されており、内服薬の方がリスクは高くなりますが、念のため湿布の場合でも妊娠中の使用は控え、市販薬ではなく医師に相談し処方してもらった方が安心でしょう。
「ロキソニン」などに含まれる成分「ロキソプロフェン」
ロキソニンなどに含まれる成分で、上記の2つに比べ、よく聞く名前ですよね。
生理痛や頭痛の飲み薬としての鎮痛薬としても有名ですし、ロキソニンテープとして湿布としても利用されています。
同じく、非ステロイド系の消炎鎮痛剤となります。
ロキソニンも、特に妊娠後期に使用した場合、胎児の動脈管維持に必要なプロスタグランジンが阻害され、動脈管の早期閉鎖などのリスクを伴います。
こちらも、内服薬と湿布ではリスクが異なりますが、妊娠中の使用に対し安全性が確立されていないものもあるので、自己判断で使用しないようにしましょう。
「バンテリン」などに使用される成分「インドメタシン」
インドメタシンも、湿布の他に内服薬がありますよね。
また、バンテリンという名前はテレビCMなどでご存知の方も多いでしょう。
腰痛、肩こり、関節痛などに、塗り薬や湿布薬としては有名ですよね。
こちらも上記のものと同じく非ステロイド系の消炎鎮痛剤ですので、胎児の動脈管早期閉鎖などのリスクがあります。
妊娠中に使える湿布と使えない湿布

妊娠中に使えない代表的な成分は上記の通りですが、妊娠中に使える湿布もあるのでしょうか。
妊娠中でも使えるとされる湿布をいくつか紹介します。
もちろん、自己判断は危険なので、妊娠中に湿布を含め、薬を使用する場合は医師に確認してからが安心です。
どのような湿布が妊娠中に使えるの?
かなり抽象的な表現になってしまいますが、前述のような妊娠中に危険な成分がはいっていない湿布薬なら使えます。
具体的には、ひとつひとつ成分を確認して医師に相談するのがベストですが、目安として「第1類医薬品」「第2類医薬品」「第3類医薬品」としての分類があります。
副作用のリスクのあわせて、市販のお薬はリスクの高い方から第1類、第2類、第3類と分類され、販売方法も異なります。
そのため、もちろん全てではありませんが、第3類医薬品に分類されている湿布の方が安心して使えることが多いです。
また、市販薬を確認して使用するのが心配である場合は、受診して妊娠中であることを伝えたうえで、湿布や塗り薬などを医師に処方してもらう方が安心でしょう。
第1類医薬品の湿布は妊娠中には使えない?
妊娠中にリスクの高い非ステロイド系消炎鎮痛剤の多くは、第1類医薬品に分類されていることが多く、必然的に妊娠中に使用できるものは少なくなります。
第1類医薬品には、妊娠中の使用は不可と明記されているものも多くあります。
販売方法も薬剤師との対面販売になるので、その際に確認してみましょう。
第2類医薬品なら妊娠中も使える?
第1類医薬品に比べると、強い成分も少なく、妊娠中でも使用できるものが多いのは事実です。
しかし、ボルタレンやバンテリンも成分の量によっては、第2類に分類されており、第2類医薬品の場合は薬剤師との対面販売は努力義務となっており、自己判断で使用してしまうことのないよう注意しましょう。
第3類医薬品なら妊娠中でも心配は不要?
第3類医薬品は、整腸剤など、比較的使用リスクの低いものがほとんどで、湿布も多くあります。
薬剤師との対面も必要なく、いつでも薬局で簡単に市販されているものを購入できるので、使用しやすいです。
注意書きにも、妊娠中の使用へ注意を促す文書がないことも多く、妊娠中にも使用できるものが多いのではないでしょうか。
しかし、安易に使用するのは厳禁。
特に長期に使用する場合は要注意です。
市販薬の方が手頃なのはわかりますが、心配しながら使っても良くありません。
受診のうえ、医師に処方してもらうにこしたことはないでしょう。
湿布が使えないときの対策
妊娠中、内服薬に気を付けることはわかっていても、湿布も気を付けるなんて、と驚いた方もいるかもしれません。
使用できる湿布も限られますし、使用できるものでも、心配しながら使用はしたくないですよね。
もちろん、原因にもよりますが、湿布が使えない時はどのような対策が良いでしょうか。
妊娠中に多い、腰痛への対策で考えてみましょう。
ストレッチをしてみる
大きくなったお腹を支える必要があり、姿勢も変わり、腰に負担がかかります。
ストレッチにより、全身の凝りをほぐし、血流を改善することにより、腰痛の改善を期待しましょう。
マタニティヨガなどもありますし、体調が良く医師の許可がおりれば、取り入れてみては。
骨盤ベルトをつける
骨盤を支えることにより、腰の負担を軽減します。
しかし、人によってはお腹の張りを感じてしまうなど、慣れるまで装着するのが難しいこともあり、無理をせず、病院で相談してからにすると安心です。
適度な運動をしてみる
妊娠経過が順調で医師の許可がおりれば、ウォーキングなどの適度な運動をしてみましょう。
運動不足による腹筋や背筋の筋力低下は、腰痛を引き起こすこともあるので、筋力維持を心掛けましょう。
気分転換にもなりますし、体重管理にも有効です。
クッションなどで楽な姿勢を心掛ける
無理な体勢でいると、腰痛になりやすいですよね。
座っている時、横になっている時など、抱き枕や少し早めに授乳クッションを購入するなどして、無理のない体勢を整えましょう。
体を温める
体を温めることにより、筋肉がほぐれ、血流が良くなり、腰痛の改善が期待できます。
アームウォーマー、レッグウォーマーなどを使用すると、体の熱が逃げにくくなります。
また、入浴や湯たんぽなどが有効ですが、実は温めすぎも体に負担がかかり良くありません。
何かしら炎症がある時は悪影響ですし、トラブルがなく体調の良い時にし、心配な時は医師に相談しましょう。
ひどい場合は医師に相談を

妊娠中の腰痛は、大きくなった子宮が影響していることが多く、残念ながら完全に治す方法はほとんどありません。
しかし、少しでも改善していきたいですよね。
湿布をはじめ、様々な対処法がありますが、妊娠中はどれも気を使います。
「この対処でいいのかな?」「そう対処したらいいのかな?」など思った場合は医師に相談しましょう。
心配しながら使用するぐらいなら相談してからに
腰が痛くて、妊娠中でも大丈夫そうな湿布をはったけど、本当に大丈夫かな…などの心配はしたくないですよね。
なんだか、心配だけで腰痛が悪化しそうです。
腰痛改善のために、湿布を使用したのに、心配な気持ちの方がストレスなんてことも。
また、今後もし何かあった場合「あの時の湿布が…」と思うのも嫌でしょう。
心配な気持ちがある時は、少し面倒でも相談するようにし、湿布など薬を使用する場合は、事前に医師に確認したり、可能なら市販のものより医師に処方してもらった方が安心です。
もしかしたら、他の病気が隠れていることも
妊娠中の腰痛は非常によくあることで、大きな心配はいらないことがほとんど。
しかし、例えば、腎盂腎炎など腎臓にトラブルがある場合は腰が痛くなることがあります。
妊娠中は膀胱炎にもなりやすく、腎盂腎炎にも注意が必要です。
妊娠中の腰痛だからと甘く見ずに、何か病気が隠れている場合もあることを念頭におきましょう。
また、忘れてはいけないのは、腰痛から陣痛がはじまったという方も多いということ。
どちらにしろ、腰痛を甘く見ないようにしましょう。
まとめ
- 妊娠中は大きくなった子宮を支えるため、腰痛になりやすい。
- 腰痛対策に湿布があるが、妊娠中は使用できないものもある。
- 非ステロイド系消炎鎮痛剤などは、胎児の動脈管収縮の恐れがある。
- モーラステープ、ボルタレン、ロキソニン、バンテリンなどは成分に注意が必要である。
- 第1類医薬品は妊娠中使用できないものが多いが、第3類医薬品はリスクが低く妊娠中使用できるものも多い。
- 薬により、成分量なども異なるので、自己判断せずに可能なら市販のものより、医師に処方されたものの方が安心である。
- 湿布が使えない時は、ストレッチや運動、温めるなどして腰痛の改善を期待する。
- 腰痛には他の病気が隠れている場合もあるので、場合によっては受診する。