もくじ
胎児ドッグをご存知でしょうか。
もしかしたら、受けるか迷っているという方もいるかもしれません。
妊娠中に胎児の健康状態を確認する目的で、メリットもありますが、皆が受けるものではないです。
出産前に胎児の状態を知るという意味では胎児ドッグは、出生前診断と同義になります。
では、妊婦検診とは異なるのでしょうか。
今回は看護師で3人の子どもの母でもある筆者が胎児ドッグの内容やメリット・デメリットについてお話しします。

胎児ドックとは
胎児ドッグとは、妊娠中の胎児の状態を確認するものです。
胎児ドッグとはどのようなもので、何がわかるのでしょうか。
胎児ドッグの定義は?
明確な定義はありません。
出産前の胎児の健康状態を診断することなので、出生前診断に含まれます。
胎児ドッグの目的は?
生まれつきの病気である染色体異常や、他の先天異常、その可能性がないか、妊娠中に確認することです。
胎児ドッグでも、調べられる疾患は限られており、疾患の可能性があるだけということも多く、全ての疾患はわかりません。
妊娠初期の胎児ドッグでは、主に染色体異常のリスクをみます。
妊娠中期の胎児ドッグでは、胎児の形態的な異常がないかを確認することになります。
胎児ドッグにも種類があるの?
大人でいうと人間ドッグですよね。
そのため、検査項目により、わかる疾患も異なります。
病院の方針や妊婦さん自身の希望により項目も変わってきます。
また、妊娠週数にもっても調べられる項目が異なります。

妊娠健診と違う?
通常受けている妊婦検診も胎児の状態を知ることです。
胎児の健康状態を知るという面では同じ目的ですが、胎児ドッグと妊婦検診はどこが異なるのでしょうか。
妊婦検診とは?
妊娠中に受ける検診のことです。
妊週数によって、2週間隔だったり4週間隔だったり毎週だったり。
自治体によっては、一定数の検診の無料(または割引)クーポンを妊婦さんに配布してくれるところも多くあります。
妊婦検診の目的は?
妊娠中の胎児の状態を知ることで、その点は胎児ドッグと同じです。
妊婦検診で確認するのは、胎児の大きさ、血流、羊水量、心拍数など胎児が順調に発達、成長しているか。
子宮などの様子からは、早産や流産の兆候はないか、治療の必要はないかなど、確認します。
そのため、出産に向けて赤ちゃんの順調な発達をサポートしていくのが妊婦検診の目的です。
胎児ドッグとの違い
妊婦検診と胎児ドッグの違いをあげてみます。
目的が違う
胎児ドッグの目的は、染色体異常や先天異常、その可能性があるか調べることを目的としているので、まず目的が異なります。
必要な機材やスタッフが異なる
画像診断では、妊婦検診より、詳細なエコー検査になりますので、専門の機材やスタッフがそろった施設でしか行えません。
原則、全額自己負担
希望者のみが受ける検査なので、補助券などもなく、基本的に全額自己負担になります。
胎児ドッグはいつうける?
主に妊娠初期に受けるものと、中期に受けるものがあります。
週数によって検査項目も異なるので、片方だけうける、両方とも受ける、など人により様々。
妊娠初期とは11~13週ぐらい、妊娠中期とは18~21週ぐらいです。
妊娠後期の胎児ドッグもありますが、多くは初期と中期になります。
胎児ドックの検査項目
胎児ドッグの検査項目はどのようなものがあるのでしょうか。
施設や妊婦さんの希望だけでなく、妊娠週数によっても異なります。
妊娠初期(11~13週頃)と中期(18~21週頃)、代表的な検査項目もあげてみました。

妊娠初期の検査項目は?
エコーで胎児を詳細にみて、各パーツに異常がないか、妊娠週数相当に成長しているかをみます。
この時期の胎児ドッグの目的は主に、染色体異常のリスクがないかをみることです。
どのような点に注目しているのでしょうか。
鼻骨などの骨が形成されているか
特に鼻骨は、週数にあった成長がないと染色体異常のリスクが高まります。
そのため、正常に骨が形成されているか確認します。
NTといわれる首の後ろの浮腫みがないか
NTは、通常の妊婦検診でも見ることができますが、正確に測り確認するのは、医師の中でも専門知識を持つ方だけです。
そのため、胎児ドッグを行っている施設だと安心です。
妊娠初期にNTが見られた場合、染色体異常や心臓疾患などのリスクが高まります。
心臓や臍帯の血流は正常か
心臓や臍帯など、主要血管の異常や逆流が見られないか確認します。
異常がある場合、やはり染色体異常などのリスクが高まります。
頭、手足など全体的なバランスはよいか
頭の中に水が溜まっていないか、手足の指はそろっているか、向きが正しいか、など詳細に確認します。
妊娠中期の検査項目は?
妊娠初期に比べると胎児も大きくなり、より詳しく胎児の様子がわかります。
この時期の胎児ドッグの目的は、胎児の形態的な異常がないかを確認することです。
どのようなことをみるのでしょうか。
とにかく全身の詳細なエコー
胎児も大きくなるので、より詳細に胎児の様子を確認できます。
もちろん、全てではないですが、外見的な形態異常がないか、内臓の状態はどうか、なども見ることができます。
臍帯や胎盤などの血管や血流のチェック
妊娠初期の胎児ドッグでも確認しますが、中期ではより詳細に見ることができます。
異常がある場合、母体の妊娠継続への影響や、胎児側にも重大な病気が隠れていることもあるので注意が必要です。

胎児ドッグをうける病院を選ぶ方法は?
胎児ドッグを受けるとなった場合、いつどのように病院を選べば良いのでしょうか。
いくつか選ぶポイントをあげてみます。
カウンセリングなどのフォローはあるか
胎児ドッグの結果によっては、今後の妊娠継続や治療方針など重大な決定をしなければなりません。
結果だけもらって終了、だと困ってしまう場合もありますよね。
胎児ドッグについてよく知ることができて、終了後のフォローなどカウンセリングがある施設が安心です。
希望の時期に検査は受けられるか
高齢出産も増え、胎児ドッグへ関心を持つ人は増えています。
妊娠が判明後すぐに胎児ドッグができる施設を探したが、どこも予約がいっぱいだったという話も聞きます。
妊娠初期に受けたい、中期に受けたいなど人によって希望がありますよね。
推奨されている妊娠週数を過ぎると、希望する検査項目が受けられなくないことも。
希望する時期に胎児ドッグが受けられる施設を探しましょう。
希望の検査項目が受けられるか
胎児を詳細にみるのが胎児ドッグですが、検査の詳細は施設により異なります。
例えば、家族に特殊な病気の方がいるので、特定の部位をよく確認して欲しい、など細かな希望がある場合は、どこまでみてもらえるか、など事前に確認しましょう。
胎児ドックのメリット
妊婦検診のようにほとんどの人が受けるものではなく、義務もない胎児ドッグですが、メリットもあります。
安心して妊婦生活がおくれる
胎児の状態がわからないと不安ですよね。
胎児ドッグを受ければ、絶対大丈夫ということはありませんが、胎児ドッグで異常がなければ安心して過ごせるでしょう。
出産に向けて心構えができる
万一、異常やその疑いがあっても、事前にわかれば親の心構えができます。
設備の整った施設で出産できる。
胎児の状態によっては、出産後すぐに処置が必要な場合もあります。
出産前にわかれば、胎児の状態にあった大きな病院で出産することもできます。
出産後に、赤ちゃんの状態が悪くて救急車で転院…ということが避けられる可能性が高く安心です。
胎児ドックのデメリット
では、胎児ドッグを受けることによりデメリットはあるのでしょうか。
結果により、不安な妊婦生活となる
確実な診断ができるとも限らないので、胎児ドッグの結果によっては、リスクが高いといわれたままで、出産を迎えることとなります。
場合によっては、胎児ドッグの結果により、より詳細な検査を受けることもできますが、やはりすべてが確実なわけではありません。
そのような場合、心配な気持ちを抱えたまま妊婦生活を送ることになってしまいます。
結果により、配偶者や親族と意見が別れることもある
何かしら望まない結果となった場合、その後の対応について配偶者や親族と意見が別れることがあります。
デリケートな問題なので、場合によっては今後の家族関係に影響してしまいます。
予約がとりにくい
専門的な機材やスタッフが必要であるため、非常に予約がとりにくいです。
希望する週数で受けられないこともあります。
高額になる
基本的に胎児ドッグは全額自費です。
妊婦検診のように自治体の補助券もないので、高額になりがちです。

受ける前にすべきこと
胎児ドッグを受ける前にやるべきことはあるのでしょうか。
何となく受けておくと安心、という気持ちだけでなく、胎児ドッグについてよく知ることが大切です。
望まない結果がでた場合どうするのかも考えておくと心強いです。
カウンセリングを受ける
なぜ胎児ドッグを受けようと思ったのか。
胎児ドッグについてどこまで知っているか。
胎児ドッグでわかるものはなにか。
胎児ドッグの結果がでた後はどうするつもりか。
など、可能なら両親そろって専門のスタッフとよく話すことが大切です。
胎児ドックの結果といえども、はっきり診断できることは少ないので、いくつかの状況を想定して、この場合はこうする、など専門家の意見も聞きながら、しっかり話しておくと安心。
もちろん、結果がでた後に気持ちや状況が変わることもありますが、事前に考えておくといざという時に慌てません。
家族との話し合い
胎児ドッグの結果によっては、今後の対応を考えなければいけません。
重大な決定をすることもあるので、胎児ドッグを受ける前に、しっかり家族で話し、胎児ドッグについての理解を深めましょう。
胎児ドッグを受けた後のことも、どうしたいのか、話し合っておくことが大切です。
可能なら家族でカウンセリングを受けましょう。
とにかく早めに予約をとる
とにかく、予約がとりにくいのが現状です。
受けると決めたら、すぐに予約をとりましょう。
場所によっては、かかりつけ医からの紹介状が必要になりますので、紹介状が必要かなどの確認も必要です。
可能なら、妊娠を希望している場合は、予約したいと思っている施設や予約状況をリストアップしておくと良いですね。
胎児ドックの費用
前述の通り、全額自費で高額になりやすい胎児ドッグの費用。
実際、どれくらいかかるのでしょうか。
具体的な費用は?
初期、中期の胎児ドッグとも2万~5万ぐらいという施設が多く、施設により差が大きいです。
その他にかかる費用はある?
上記の2万~5万というのは、基本的には詳細なエコーの胎児ドッグのみの費用です。
追加で血清マーカー(母体の血液検査で胎児の障害などの確率をだす)などの検査を受けたいとなれば、また3万前後の費用がかかります。
また、その後さらに詳細な検査を、となると、その分費用がかかることも覚えておきましょう。

まとめ
- 胎児ドッグとは出生前診断と同義で、出産前の胎児の健康状態を調べることである。
- 胎児ドッグは、あくまで病気や障害の可能性を調べるもので、はっきりわからないことも多い。
- 胎児ドッグは妊娠初期と中期に受けることが多く、週数により受けられる項目が異なる。
- 妊娠初期の検査は、主に染色体異常のリスクの高さをみるものである。
- 妊娠中期の検査は、詳細な形態的な異常がないかをみるものである。
- 胎児ドッグのメリットは、安心して妊婦生活が送れるのと、事前に心構えができること、胎児の状態にあった病院を選べることなどがある。
- デメリットは、結果により不安な妊婦生活をおくることになり、費用も高額で予約を取りにくい。
- 胎児ドッグを受ける前には、家族でしっかり話し合い、カウンセリングを受けることが大切である。