妊娠は嬉しい反面、いろいろな不安が起きるものです。
破水もそのひとつで、妊娠したら避けては通れないものです。
それが初めてのことなら、なおさら不安も大きくなります。陣痛が始まり、いよいよ出産という時に破水するのが理想的ですが、そうでない場合もたくさんあります。
自宅や外出先で突然、破水してしまいパニックになってしまうママもいます。
ここでは、破水時の対処方法をわかりやすく解説しています。
破水について、正しい知識と対処法を知って、心の準備も整えましょう。
破水とは?

お腹の中の赤ちゃん(胎児)を包んでいる膜が破れて、膜の中に入っている羊水が子宮口の外へ流れ出ることを言います。
破水すること自体には痛みは伴いませんが、破水してから24時間以内に陣痛が始まることがほとんどです。
羊水は、水様性の透明な液で、お腹の中の赤ちゃんにとってはクッションの役割をし、外からの刺激などを緩和するのに役立っています。
また、肺の発育や、お腹の中の赤ちゃんを一定温度で維持するのを助けています。
破水にも種類がある?!
破水する時期の違いと、破れる位置の違いによる名称があります。
破水の種類によって、出産までの流れが変わってくるのでおさらいしましょう。
破水する時期の違い
適時破水
陣痛が始まっており、子宮口が全開大になってから、卵膜が破れて破水が起こること。
理想的な破水です。
早期破水
本陣痛は始まっていて、子宮口が全開大になる前に、破水が起こること。
基本的には、適時破水時のようにそのまま出産の流れになります。
前期破水
本陣痛が始まる前に、卵膜の一部が破れること。
すべての妊娠期間で起こる可能性がある。
妊娠週数により、出産までの流れが違います。詳細は「破水から出産までの流れ」で出産までの流れを述べています。

破れる位置の違いによる破水
低位破水
子宮口の近くの卵膜が破れること。
一気に多量の羊水が流出することがあります。
低位破水が通常の破水位置になります。
高位破水
子宮の高い位置の卵膜が破れること。
卵膜の小さな穴から少しずつ羊水が流れ出て、チョロチョロと膣から出てくることがある。
流れ出る羊水の量が少なく、尿漏れとの判断が難しいです。
高位破水になる原因
- 卵膜の異常
- 子宮内感染症
- 急激な子宮内圧の上昇
子宮内圧が上昇する要因
- 羊水過多症
- 多胎妊娠(双子や三つ子など)
- 重い荷物を持つ
- 性交
- 転倒
- 子宮への過度な刺激
高位破水は、原因不明で起こる場合も多く、全体の5~10%の確立で生じています。
妊娠37週以降なら、8割が24時間以内に陣痛が起きるため、病院で分娩待機になります。
37週以前に高位破水が起きた場合は、早産のリスクがあるため、入院による安静と感染予防のための抗生剤使用、子宮収縮抑制剤などを使用し、できる限り妊娠を継続させます。
破水?尿漏れ?

妊娠するとホルモンが作用して、尿漏れが起きやすくなります。
特に出産が近づいてくると、膀胱付近の筋肉や膣を緩ませるホルモンが作用するため、ちょっとした咳やくしゃみをするだけでも尿漏れは起こります。
これは自然な体の反応なので心配になる必要はありません。
ただ、破水した時に、本当に破水なのか尿漏れなのか、自己判断ではわからず迷うことが多くあります。迷った時はもちろん、破水したら、すぐに産院へ連絡し、指示をもらいましょう。
色
羊水の色は、淡い黄色 または 透明です。
おしるしが混ざると茶色っぽい、またはうすいピンク色になります。
少量の血が混じるのは、破水におしるしが混ざったものです。
危険な色
鮮血
出産よりも前に子宮壁から胎盤がはがれてしまう、常位胎盤早期剥離
緑
赤ちゃんが苦しいと、羊水に便が混じり、緑色になる
危険な色の場合は、すぐに産院へ連絡し、指示により救急搬送になります。
慌てなくて良い色
透明 うすピンク 淡黄色
におい
羊水
生臭い独特なにおい 無臭だと言う人もいます。
尿漏れ
尿のアンモニア臭
でかた
破水
自分の意思では止められない。もれ出てくる感じ。
尿漏れ
自分で止められます。
尿漏れは、体を起こした時や、くしゃみ、せきなど腹圧がかかった時に1回だけ出ます。
音
破水の音がしたという人がいますが、音は出ません。
妊娠後期の羊水は500mlほどあるので、卵膜が破れた時の衝撃として、体に伝わっているのかもしれません。
破水時の対処法
ながれ
破水が始まったら
まずは落ち着くこと
慌てたり、パニックになりやすいので、一度深呼吸をするなどして落ち着きましょう。
生理用ナプキンや清潔なタオルを股にあてる
産院へ連絡
- 診察券番号、名前
- 出産予定日
- 初産か経産婦か
- いつから破水しているか
- 破水の色
慌てている時は、適切に報告ができないかもしれません。
固定電話の前に上記をメモしておくのも良いですね。
出血量が多く意識がないなど、特別な時以外は、なるべく妊婦本人が直接電話をかけましょう。
話している様子など総合的に病院側は判断し指示を出すためです。
病院へ出発
ほとんどの場合、破水後24時間以内に陣痛は始まります。
自家用車で、運転手はパートナーや知人などにまかせ、病院へ向かいましょう。
一人の場合は、陣痛タクシーを利用しましょう。事前登録しておくことをオススメします。
バスタオルを腰に巻き、ビニール袋など防水シーツになるものを車内に敷いておくと車内が濡れなくて良いでしょう。
入院バッグも余裕があれば持って行きましょう。
まだ入院準備をしていない状態であれば、無理にする必要はありません。
入院後に家族に必要物品を揃えてもらいましょう。
破水後はなるべく安静にし、動き回らないようにすることが大切になります。
疑問解消 Q&A
Q1.自分で運転して病院に行っても良い?

A2.危険なのでやめましょう。
破水したら24時間以内に陣痛が始まることがほとんどです。
運転中に陣痛がきたら、集中力がなくなり事故につながる危険が高いからです。
運転はパートナーや自分以外の人に任せましょう。
また、バスや電車などの公共交通機関での移動も危険なため、やめましょう。
車がない時、運転する人がいない時は、タクシーの利用も考えましょう。
「陣痛タクシー」「マタニティタクシー」と呼ばれているタクシーを、インターネットで探し、自分の自治体でやっているタクシー会社に事前登録しておくと安心です。
乗務員は助産師からの研修を受講し、車内に緊急対応マニュアルを常備しています。
Q2.救急車を呼んでもいい?!

A2.基本的には、自家用車やタクシーで行きましょう。
救急車を呼ぶべき時
- 動けないほどの痛みがある時
- 大量出血
- 意識がない
- 赤ちゃんの頭が出てきている
- 医師の判断で手配された時
Q3.入浴してから病院に向かっても良い?

A3.入浴、シャワー、トイレ後のウォシュレットはしてはいけません。
破水すると、卵膜が破れたところから、赤ちゃんに細菌が感染する可能性があります。
そのため、陣痛よりも先に破水した場合は、入浴、シャワー、トイレ後のウォシュレットは使用できません。
股が濡れて気持ち悪く、洗いたくなる気持ちはわかりますが、清潔なタオル等で拭いてナプキンなどを当てるのみにしましょう。
また、陣痛が始まったら、初産の場合は特に入浴すると良いと、病院から指導されますが、破水から始まる場合は、絶対入浴してはいけません。
Q4.夜中に破水した!病院は開いてない時間だから朝になってから受診しても良い?!

A4.待ってはいけません。
時間、曜日に関係なく、すぐ産院に連絡をしましょう。
産科で入院施設があるところは、24時間対応をしています。外来時間でなくても、電話相談はできるので、破水なのか尿漏れなのか自分で判断がつかない場合も含め、すぐに連絡をしましょう。
破水後、時間が経過すると赤ちゃんへの細菌感染のリスクが高くなるからです。
Q5.逆子だと言われています。破水したらどうなるの?

A5.逆子の場合、破水すると羊水が大量に流出する可能性があります。
通常は、赤ちゃんの頭が蓋をする役割をしてくれますが、逆子の場合は蓋をする頭が逆なので、通常よりも破水すると羊水が大量に出てしまいます。
またへその緒が先に出て、赤ちゃんの首をしめることもあり危険です。
破水したら、歩かず横になり、すぐに病院へ連絡し、移動手段を含め医師の指示を仰ぎましょう。
Q6.破水したら、動いても大丈夫?
A6.なるべく安静にしましょう。
気が動転していたり、入院することを想定して動きたくなる気持ちはわかりますが、これ以上、破水量が増えないようにナプキンを当てたら車に乗りこむだけにしましょう。
必要なものは、周りの人に頼みましょう。
日ごろから、家族と必要物品などシュミレーションしておくと心強いですね。
Q7.破水時にあると便利なものって何?
A7.生理用ナプキンや、バスタオル、ビニール袋など防水シーツになるものは先述しました。
それ以外にも、新生児用のオムツも代用できます。試供品ですでに持っていたり、入院物品用に購入している人も多いと思います。
夜用の生理用ナプキンよりも吸収量が多く、破水時にも使えます。テープ式なので、そのまま広げてショーツに付ければOKです。
臨月になると、いつ破水してもおかしくないので、家にいる時でもおりものシートを付けたり、外出先でもナプキンは持ち歩くなどしておくと良いでしょう。
Q8.破水したら、赤ちゃんは苦しいの?
A8.破水に気付き、すぐに対応できれば問題はありません。
気付くのが遅く、羊水の量が減ることによるリスクがあります。
羊水の量が少なくなることにより、赤ちゃんの肺が十分に成長できなくなることや、赤ちゃんや臍帯が子宮壁で圧迫されて苦しくなる可能性があります。
低位破水では、一気に羊水が流れ出てくることが多く、気付きやすいので良いですが、高位破水の場合は、少し濡れてるな?くらいの量しか出ないことがあるので見逃しがちです。
少しでも変だなと思う時は、診療時間内を問わず、産院に連絡し指示を仰ぎましょう。
それが、破水後のリスクを減らし、安全に出産できることにつながります。
破水から出産までの流れ

破水してからの出産までの流れを以下に述べます。破水の時期やタイミングにより違いがあるので、破水から出産までの時間を推測することは難しくなります。
破水のタイミングは読めないので個人差があることを頭に入れておきましょう。
適時破水の場合
適時破水では、子宮口が全開大になってから破水しているので、そのまま分娩になります。
病院の分娩台にすでに乗っている状態なので、助産師や医師が対応してくれます。一気に羊水が流れ出てくる感じがわかると思います。
陣痛が加速するので、「ハッハッハッハッ」と短く息を吐くことに集中すると良いでしょう。まもなく赤ちゃんとご対面です。
早期破水の場合
早期破水は、本陣痛が始まっていて、子宮口が全開大になる前に破水する状態です。
陣痛が始まっているので、大体の人は病院に到着しているでしょう。基本的な流れは、適時破水の時と同じ、そのまま分娩になります。
破水により、陣痛が加速していくでしょう。
医師の指示により、感染予防のために抗生剤を使用することがあります。
前期破水の場合
前期破水は、本陣痛が始まる前に卵膜の一部は破れて破水することなので、すべての妊娠期間で起こる可能性があります。
妊娠34~36週の場合
そのまま入院になります。
感染予防の抗生剤を使用しながら、なるべく妊娠期間を延長させる措置をとります。
赤ちゃんの呼吸機能が十分に発達している場合は、感染リスクを減らすためにすぐに分娩となることもあります。
妊娠34週未満の場合
入院管理になります。
赤ちゃんの肺の成長が不十分なので、体外で呼吸するのは難しい時期です。
そのため、できるだけ長く子宮内にとどまれるよう、感染予防と薬で子宮の収縮を抑えます。
感染症が見られる場合は、赤ちゃんが未熟な状態でも出産せざるを得ません。
新生児集中治療室(NICU)などの設備がある病院で分娩することになります。
まとめ
いざという時に慌てないようにするためには、日ごろから心の準備も含めて、きちんとした知識を備え不安を少しでも取り除くことが大切です。
備えあれば、憂いなし!です。
気負いすぎることなく、家族と雑談をしながら、シュミレーションを兼ねて一緒に準備できると良いですね。